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やっと好調! “安打製造機”レッズの秋山翔吾がここまで「メジャーで苦戦し続けていた」理由
posted2020/09/19 08:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
秋山翔吾がようやく実力の片鱗を発揮しだした。9月に入り成績は彼らしい数字が並んでいる。
42打数14安打12四球、打率.333、出塁率.491(9月16日終了時点)
打率もさることながら、5割に近い出塁率は両リーグを通じて6番目という堂々たる成績になっている。それでも彼はまだ控え目だ。
「打席をこなすにつれて、同じやられ方をしていたことに対して、失敗を重ねないと成功につながらない。それが投手の球の速さに慣れてきたのもあれば、打てるところ、打てないところのストライクゾーンの見極めっていうのもある。少しずつ、打席に立つにつれて、なんとなく修正はしてこれているかなと思います」
確固たる技術の構築はまだで、自信は芽生えていないと言う。それでも打率1割台に低迷していた2、3週間前のことを考えれば成績は飛躍的に上昇カーブを描きはじめた。その転機として、彼はダルビッシュ有とメジャーで初めて対戦した8月29日の試合をあげた。
「それまでの成績を踏まえて、もうひとつ何か変化がないと打席には入れないと思った」
ダルビッシュから放ったクリーンヒット
8月28日の時点で自身の打率は.183。対するダルビッシュは今季のサイ・ヤング賞最有力候補と評価され、メジャー屈指の剛球と多彩な変化球を操り、頂点に君臨していた。格の違いは仕方ないにしろ、せめて一目置いてもらう内容を残したい。そんな心境だったということか。その中で秋山は第3打席にダルビッシュの96マイル(約155キロ)の内角寄り高めの直球を右前にクリーンヒットしたのだった。
「打ち方も修正はちょっと前からしてたんです。あの1本が出てダルビッシュさんのコメントとか、その後話したりする中でこの形が、自分が非力なバッターとしても、ラインアップに入る中で必要なことというのは、あの試合から結果も少しついてきたところもある。残り何試合で何とかしないとな、というのも両方重なった試合だったかなと思います」
この試合を境に秋山が残した成績は52打数17安打、15四死球。打率.327、出塁率.485。彼の感覚と残した結果が一致していることがわかる。
屈指のヒットメーカーが苦しんだ10キロの差
日本でシーズン216安打の最多安打記録を樹立した安打製造機がメジャーで苦しんできた部分はなんだったのか。平均で約10キロほど速いとされる球速への対応が大きかったという。
「そこが一番大きな違いで戸惑った。それに自分が対応できなかったというか、慣れるのにすごい苦労しているところでもある。それ以外あんまり大きな違いは……。一番衝撃的に大きかったから、そこにフォーカスしている」
補足をすれば球が速いだけではなかった。投球フォームの間合い自体がクイックな中で球速は常に155キロを超えてくる。この短い間に対応するために彼は何をしたのか。