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日本のサイドバックよ、香車+桂馬&成金の動きを! 止まってクロス、マイナス、斜めに。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/09/06 17:00
代表からしばらく離れてはいるが、太田宏介のクロスはサイドバック随一といってもいいだろう。
引いて守る相手の攻め方は「詰め将棋」。
味方のサイドハーフが対面のサイドバックをタッチライン際で釘付けにし、内側にスペースをこしらえてから、そこにサイドバックが走り込んで数的優位をつくり、敵のマークをはがしていく。そうした選択肢が、日本代表やJクラブでは、ほぼない。
1982年スペイン・ワールドカップ・2次リーグのブラジル対アルゼンチンで、ブラジルの左サイドバックを担うジュニオールが、この「空白」を突いて斜めに走り込み、ジーコとのワンツーから鮮やかにゴールを決めている。古今東西、こうした事例は数多く見つかるはずだ。現在なら、バイエルン(ドイツ)が良い見本だろうか。
対アジアにおける日本代表のテーマは「引いて守る」相手の攻略だ。4-5-1、5-4-1という並びから成る守備ブロックとの戦いは「詰め将棋」と似ている気もする。敵の駒(人)の配置がほぼ決まっているのだから、攻略の手筋(パターン)を構築してもいいはずだ。
それが個々のひらめき(アイディア)頼みの「行き当たりばったり」では限界があるだろう。相手が深く引くならば、サイドバックも香車のままでは困る。前方に突き進むだけのスペースは少ないのだ。
敵陣深く押し込んだら、斜めや横にも動く『成金』へ――。そろそろ、固定観念の呪縛を解いてもいいような気がする。せっかくのハードワークが「徒労」に終わるのは忍びない。どれだけの効力があるかは別にして(1)止まって蹴る(2)マイナスに蹴る(3)斜めに走る、といった従来と異なる選択肢にトライしてもいいのではないか。
どの道、止まって蹴るクロスが味方の頭に吸い付かないようでは、走って蹴るクロスの結末など知れている。まずはクロスの練習から――ってプロ(職人)の方々に言うセリフじゃないですが……。