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藤井聡太棋聖、史上最年少二冠が目前。木村一基王位の巻き返しは「サッカーなら“1-0で守り切る”しかない」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by日本将棋連盟
posted2020/08/18 19:30
王位戦第4局、藤井聡太棋聖(左)と木村一基王位の熱戦に期待したい(写真は第1局)。
第61期王位戦第4局は8月19、20日、福岡県福岡市の「大濠公園能楽堂」にて開催される。第3局終了時点で挑戦者の藤井聡太棋聖(18)が木村一基王位(47)相手に3勝0敗として史上最年少での「二冠」にあと1勝としており、注目度が非常に高まる一局となる。
中村太地七段に聞く王位戦と“藤井対策”。
そこで王座獲得経験もあり、NumberWebにて連載を開始した中村太地七段にここまでの対局と“藤井棋聖対策”について聞いた。
まずは王位戦第1局と第2局で受けた印象をこう語った。
「特に第1局は藤井さんが木村王位に対して、これから押し引きが繰り広げられそうに見えた局面から30手以上もの間攻め続けて勝利したことに大きな衝撃を受けました。第2局も木村王位の構想力が序盤から上回っていましたが、劣勢の中でも藤井さんは終盤に相手が正解を選びづらい手を指して、最終的に逆転を呼び込みました。
ネット中継で表示されるAIの評価値を見ると、“最善手を指していれば……”と感じる方も多いかと思いますが、その最善手を指すこと自体が本当に難しいですし、木村王位を迷わせるほどの一手を藤井さんが指したのだと感じました」
渡辺名人の棋聖戦第3局が理想の攻略法。
今年度勝率が8割を優に超える藤井棋聖にどうやって勝てばいいのか。その1つの手立てとなるのではと中村七段が見ているのが、第91期ヒューリック杯棋聖戦第3局だ。
棋聖戦自体は渡辺明棋聖(当時。その後名人戦に勝利し、現在は名人含めて三冠)相手に3勝1敗で勝利し、藤井七段(当時)が史上最年少タイトル獲得を達成した。しかし藤井棋聖が唯一敗戦した第3局では、事前の準備が実ったこともあり、渡辺新名人が勝利。90手目付近まで研究範囲にしていたとの報道が話題になった。
この対局について、中村七段は1つの“勝ちパターン”としてこう分析している。
「現時点で藤井棋聖相手に勝利するためには、序盤から中盤まで細かくリードを奪いつつ、藤井棋聖に時間を使わせる。そして終盤にかけてそのリードを生かして勝つ、というのが理想的なパターンです。というか、これしか思い浮かびません(笑)。サッカーに喩えると、後半開始早々に1点を奪って、1-0のスコアで守り切るという印象でしょうか」
同じプロ棋士をもってしても、藤井棋聖の力をそこまで認めている証拠だ。