猛牛のささやきBACK NUMBER
NPB初女性スカウトが見る“立ち姿”。
上野由岐子らと掴んだ「金」の知見。
posted2020/08/10 09:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
7月から各地で高校野球の独自大会が行われ、すでに決勝を迎えたり、終了した都道府県もある。
長い梅雨が明け、試合も気温も熱を帯びる球場では、例年に比べて限られた視察の機会を逃すまいと、プロ球団のスカウトが目を凝らして選手を見つめる。
その中に、今季からオリックスのスカウトに就任した乾絵美の姿がある。
乾は元ソフトボール選手。捕手として2004年アテネ五輪で銅メダル、そして2008年北京五輪で金メダルを獲得した。
所属チームの日立&ルネサス高崎(現・ビックカメラ高崎)でも、'08、'09年に主将として国内の大会すべてで優勝を果たし、26歳で現役を引退。
「自分の夢であった『オリンピックで金メダル』ということをかなえ、国内の大会でもすべて優勝して、もうこれ以上ない、やりきったなというのがあったので、区切りをつけさせてもらいました」
アカデミーの指導者としてオリックスに。
引退した'09年の12月に、オリックスとの出会いがあった。オリックスは'10年4月に、小学6年生までの子供を対象としたベースボールアカデミーを創設することを目指していた。野球かソフトボールの経験があって指導ができる人材を探しており、乾にオファーした。
「調理師免許を取って母の実家の民宿を継ごうかな」と思っていたという乾は、そのオファーを受けて'10年1月にオリックスに入社。10年間、子供への指導や普及活動に取り組んできた。
オリックスは毎年「オリックス・バファローズCUP」という小学生の大会を開催しており、その出場チームの中からメンバーを選抜してオリックスジュニアを結成し、「NPB12球団ジュニアトーナメント」に出場している。
乾はそのオリックスジュニアで、過去に九鬼隆平(ソフトバンク)、西川愛也(西武)、藤原恭大(ロッテ)など、のちにプロ入りする選手たちを見てきた。今年、ドラフト候補として注目されている明石商高3年の来田涼斗もオリックスジュニア出身で、乾に強い印象を残した選手の1人だ。