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PGAツアーでコロナ被害が急拡大。
会長の苛立ちと行動規制の現実味。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2020/06/25 17:00

PGAツアーでコロナ被害が急拡大。会長の苛立ちと行動規制の現実味。<Number Web> photograph by AFLO

試合の中断中のブルックス・ケプカとダスティン・ジョンソンの様子。割と無防備にも見えるが……。

葬儀への参列が理由だった可能性もあるが。

 陽性判定を受けた2人の選手、ワトニーとチャンプの感染経路は、今のところわかっていない。少なくとも公表されてはいない。

 マクダエルのキャディ、コンボイは今週の第3戦、トラベラーズ選手権に来てはおらず、フロリダ州内の自宅で受けた検査で陽性と判定された。

 コンボイは、再開初戦のチャールズ・シュワッブ・チャレンジ後、テキサスからフロリダへ戻る際、米ツアーのチャーター機ではなく一般の航空会社のフライトを利用した。

 その後、第2戦のRBCヘリテージ開幕前の月曜日に、フロリダ州オーランド市内で、マクダエルとともに共通の友人の葬儀に参列。ケプカのキャディ、エリオットも参列。

 行動履歴を見る限りでは、コンボイは一般のフライトあるいは葬儀で、エリオットも葬儀で感染した可能性が考えられる。

 ボスである選手がすでに感染していることは十分に考えられ、しかもトラベラーズ選手権会場でマクダエルとケプカ兄弟は一緒に練習ラウンドも行なっていた。そのため、マクダエルとケプカ兄弟も陰性ながら自主的に棄権した。

クラブの受け渡しは普通に行われていた。

 しかし、こうした選手やキャディのどの部分をどう判断して「ガイドラインを守らなかった」と言えるのかは、不明のままだ。

 一般のフライトや葬儀参列が感染した原因だとすれば、それはツアーという場の外側で起こったことであり、私生活を含めてツアーが選手やキャディの行動を監視、規制することは不可能だ。

 それならばツアーにおいて、試合においてはどうかと言えば、ツアー再開に際して検査体制や行動規制に関するガイドラインが示されてはいるが、再開初戦の幕が開いた当初から、大半の選手とキャディはガイドラインで禁じられているはずのクラブの受け渡しを行なっており、ソーシャル・ディスタンスも保たれてはいなかった。

 そうした「なし崩し的」になっていた部分を「きちんと守りなさい」と警告することはできるし、選手もキャディもガイドラインに従うべきだが、ふとした瞬間、2人の距離が狭まることはあるだろうし、うっかりクラブを受け渡すこともあるだろう。

 そのたびに米ツアーは選手に「ほら、違反した」「10万ドルの給付金をうけとる権利はキミにはない」と言えるのかどうか。その環境下で選手たちは戦えるのか。

 だが、「戦えない」「できない」というのなら、そこでピリオドが打たれるだけのこと。米ツアーも選手もキャディも、だからこそ苦悩の中にある。

【次ページ】 検査の結果待ちの間は……。

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