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DeNAを優勝に導くは石田健大か。
頼れる投手の今季にかける決意。
posted2020/06/16 20:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Kyodo News
「優勝したい」という選手は数多くいるが、「優勝しなきゃマズい」と危機感をもって語る選手はあまりいない。ましてや1998年以来20年以上リーグ優勝できていない横浜DeNAベイスターズの選手であればなおさらだ。
しかし、石田健大は真剣な表情で言うのだ。
「今年じゃないかなとは思っているんです。今シーズン獲れなかったら、逆にマズいと思うんですよ」
DeNAは2016年シーズンで3位になって以来、2018年を除き、Aクラスへ進出している。2017年には日本シリーズを経験し、昨年は22年ぶりに2位でシーズンを終えている。いよいよ機は熟したということか。
「一昨年は1勝差でBクラスになっていますし、昨年は首位に0.5ゲーム差まで迫りながら優勝を逃してしまった。つまりこの2年で1勝、2勝の重さをチームメイト誰もが痛感したわけです。勝たなければいけない試合は絶対に勝たなければいけない。この経験をしてからの今年なので、僕としてはちょっと楽しみだなという思いもあるんです」
選手たちが若くて勢いのあるDeNAに足りなかったのは“経験”である。足りなかったピースが、揃うのではないかと石田は強く予感しているのだ。そして今年優勝することができなかったらいつできるのか、と。
必死さに満ち溢れていた昨季。
昨季は大車輪の活躍だった。リリーフからスタートし、夏場には先発に戻り、終盤さらにリリーフへ。チーム状況によってポジションを変えながら40試合を投げ、防御率2.14は投手陣の中核を成す立派な数字だった。どんな場面であっても颯爽とマウンドに現れ、強く腕を振る姿は、観る者の心を打つ必死さに満ち溢れていた。
そしてもうひとつ、昨年から選手会長となったことで、立場が人間性を育てた。昨年の春、当時キャプテンだった筒香嘉智から、自分の目が行き届かない投手陣の様子を観察しておいて欲しいと伝えられると、石田はそれを実践した。いつもとちがう風景には、新たな発見があったという。
「とくに自分からなにを言うわけではないのですが、人のことを意識して見ていると、どんなことを考えているのかわかるようになったんですよ。今までは自分のことばかりだったのですが、余裕ができたというか、視野が広がったんですよね。それをわからせてくれた筒香さんには感謝ですよね」