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長谷川唯がコロナ禍の中で見出した、
なわとびとサッカーの共通点って?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySports Graphic Number
posted2020/06/04 20:00
リフティングしながら大なわに挑む長谷川唯選手。SNS上では物凄い反響!(日テレ・東京ヴェルディベレーザ長谷川唯選手Twitterより)
なわとびで培われる三つの「力」。
43年の歴史を持つ同協会は「子供たちの気持ちを高めていき、学習効果に繋げていく」ことを目指し、だれもが楽しめるように、各地でなわとび教室や講習会を開いている。また特になわとびが盛んな埼玉県では、毎年500~1000人規模のなわとび選手権を開催しているそうだ。
そんな“なわとびスペシャリスト”の戸田さんは、なわとび効果を数値としてこう示してくれた。
「ある小学5年生の男子15名と女子16名が、4月から3月まで毎日なわとびに取り組んだ成果として、新体力テストのシャトルランと垂直とびの数値があります。県平均の伸び率を『1』とすると、その小学生の伸び率はシャトルランが『男子1.16、女子1.14』、垂直とびが『男子1.17、女子1.23』となりました」
持久力のシャトルラン、跳躍力の垂直とびともに県平均の伸び率をはるかに上回っている。やはり身体能力に好影響があるんだ……と思っていたところ、戸田さんはこの2つの能力と同等、いやそれ以上に大事な能力がなわとびで取得できると話す。
それは巧みに体を動かすための「調整力」というものだ。
簡単なことでも、同時にやると……。
「縄を回すという運動とともに、ジャンプをする運動もありますよね。それぞれの運動であれば容易にできると思うんですけども、縄をリズムよく回すタイミングと、ジャンプのタイミングを合わせて調子よく跳び続ける。これが調整力と言われるものです。
ではちょっと実験をしてみたいんですけど、片手を『グー、パー、グー、パー』と続けてください。簡単ですよね。では反対の手だけで『グー、チョキ、パー、グー、チョキ、パー』と続けるのも簡単ですよね。でも『グー、パー』と『グー、チョキ、パー』を片手ずつ同時にやると、どうですか?」
グーチョキパー、パーグー、グーパーチョキパーパーグー……ああ、こんがらがる。同時に違う行動をこなすのは、頭でわかっていても体が反応してくれない。体の動きを総合的にコントロールしようとするところで、調整力が必要になるのだという。
「そう、難しいですよね。このような動きを巧みにこなせるか。それが調整力なんです。なわとびをしながらリフティングするのは非常に難しいんですよ。もし私たちがやろうとしても、リフティングができませんから(笑)」
なるほど。そもそも複合的な運動であるなわとびに、リフティングの要素を追加するのだから、より一層巧みな体さばきを必要とされるのか。その調整力が高いと“器用な動き”に見えるのだろう。