ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
優勝したら志村けんと「アイーン」。
ゴルファーが感じた一流の気遣い。
posted2020/04/13 11:50
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
いつ、どこで、それが生まれたのかは、インターネットで探ってもいまひとつハッキリしない。アゴを突き出して、首もとに手をやる「アイーン」のギャグ。そのポーズを見た後輩のお笑い芸人が、おもしろがって擬音をつけたという説が有力のようなのだが、今となっては本人の口から、再びルーツが明かされることはない。
ただ、彼女たちが親愛なる思いを持って、歓喜の時間に「アイーン」をしたのは事実である。
新型コロナウイルスは、何十年にもわたって日本中の人々を笑顔にしてきた存在を奪った。3月29日、タレントの志村けんさんが亡くなった。
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日常の何気ないシーンを笑いに変えてきた志村さんのコントには、ゴルフを題材にしたものもあった。空気の読めない騒がしいキャディに扮したり、セクハラを地で行くレッスンプロを演じたり。
こんな人、いないでしょう? いやいや、いるよね、こういう人。
誰にとっても分かりやすい笑いのなかには、皮肉もたっぷり込められているようで、コアなゴルフファンほど吹き出してしまうだろう。
SANKYOレディースのプレゼンター。
志村さんとプロゴルフとの最たるつながりといえば、2000年から12回にわたって群馬・赤城CCなどで行われていた日本女子ツアー・SANKYOレディースオープンだった。主催者の株式会社三共が製造するパチンコ、パチスロ台のCMキャラクターを務めていたことから、毎年大会前のプロアマ戦に参加し、表彰式でプレゼンターを務めた。優勝した女子プロが一緒に「アイーン」のポーズで記念写真に収まるのが恒例になっていた。
2004年大会で優勝した北田瑠衣はその日、自宅で訃報を知った。「志村さんが入院されてから、テレビの速報(ニュース)が出るたびに、ちょっとドキッとしていました。朝方、洗濯ものを干していて家族の『えー!』という声がして……。日本の優れた医療体制からしても、回復されると思っていたので本当にショックでした」と声を落とした。