酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
全員が一定数の打席、バントなし。
野球離れの中で型破りな中学チーム。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2020/03/30 08:00
東京インディペンデンツの練習にて。本人が“やりたい”と思う自発性こそスポーツ、野球の原点であってほしい。
勝利至上主義より子供の成長。
「日本には硬式、軟式合わせて7つもの中学野球団体があります。それらの団体にはすべて全国大会があり、所属チームは“大会で好成績を収めること”が目標になっています。
それ自体は悪いことではありませんが“行き過ぎた勝利至上主義”は、選手の負荷が増えますし、選手ごとの経験値の差が生まれるので、子どもたちのためになっていないと思います。それに各団体は交流がないので、指導方針が合わなくてチームを移籍したいと思っても、難しい場合が多いんです。
そんな弊害があるので、東京インディペンデンツは、団体の枠を超えて、特定の組織に所属しないチームとしてスタートしたんです」
しかし、公式戦に参加しないことでデメリットはないのだろうか?
「うちは試合で勝つことよりも子供の成長を大事にしています。また公式戦はありませんが年間20~30試合交流戦を行います。選手全員に一定の打席数を確保し、さまざまなポジションも経験してもらいます。
高校への進学を、野球推薦で考えてはいません。そもそも野球だけの人材育成は目指していません。海外の大学などへの短期野球留学等を通じて、広い視野で自分の進路を自分で決められるような人材育成を考えています。そのため、活動時間も短くして、勉強や趣味など他の経験も積んで“本気の文武両道”を目指します」
肩ひじの故障予防にフルスイング。
手渡された資料には「肩やひじの故障予防について」と書かれていた。「野球肘」などの障害を予防するために練習環境、練習内容に留意し、指導者も常にアップデートするということだ。このあたりも従来の中学野球では見られなかった考え方だ。
グラウンドでは、中学生たちが歓声を上げながらバッティングやピッチングに興じている。雰囲気からして他の中学野球とは違っている。
子供たちを指導していた佐藤謙太はこのように話す。
「基本は硬式野球ですが、硬式のグラウンドがとれないときは軟式でやります。細かい技術ではなくて、打撃はフルスイング。バントなどはやらせません。“この子は2番セカンド”みたいな決めつけはせずに、自由に野球をやらせます」