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五輪は延期でも練習難民は続く。
「選手である前に、社会の一員」 

text by

及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2020/03/26 11:50

五輪は延期でも練習難民は続く。「選手である前に、社会の一員」<Number Web> photograph by AFLO

4年に一度、いや人生に一度の機会である五輪の状況が不透明な中でも、多くのアスリートは自制心を持って行動した。

水泳は陸上よりも厳しい状態。

 とはいえ、外で練習できる陸上選手は比較的恵まれた方かもしれない。

 昨年の水泳世界選手権で6冠のケーレブ・ドレセル、リオ五輪4冠のケイティ・レデッキーなどトップ選手も、大学施設の閉鎖とともに練習拠点を失った。アメリカの水泳選手の多くが、所属していた大学で練習するケースが多い。ドレセルはサニブラウンと同じフロリダ大学だ。

 オリンピックセンターに駆け込んだ選手、また自宅にプールを持つ人を探し、頼み込んで練習させてもらうなど、選手やコーチと奔走して練習場所を確保できた人もいるが、様々な制限があり、思うような練習環境とは程遠い。

 特別なプールが必要なダイビング、団体で行う水球やシンクロナイズドスイミングなどの選手には、この2週間ほどほとんどプール練習ができなかった選手もいたのではないだろうか。

 イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、ポーランド、オランダ、ベルギーなどヨーロッパの多くの国々で外出規制が敷かれた。国によっては、単独で行うジョギングなどは許可されるケースもある一方で、不要不急以外の外出は禁止と厳しい規制をかけた国も多い。

 ルーマニア体操連盟、ドイツ陸上連盟は「屋外での練習も禁止。外出も避けるように」と公式に伝え、ほかにも多くの連盟が選手への自宅待機を呼びかけていた。

自宅に平均台を搬入した猛者も。

 そんな中、外出規制で練習場にいけないオランダの体操選手サネ・ウェイファースは、体操選手らしい(?)ウルトラCを披露している。

 リオ五輪で女子体操の平均台で金メダルをとった彼女は、なんと自宅に平均台を注文。アパートの壁にはしごをかけ、2階の窓から搬入し、5メートルの平均台をリビングルームに運び入れ、練習を始めている。さすがに平均台の上で跳躍したりはできないだろうが、感触を忘れないことも大切な練習なのだろう。

 地元ニュースに笑顔で話す姿をみると明るいニュースにも見えるが、練習できない焦り、不安などは想像を絶するものだったと思う。

【次ページ】 イギリス陸連の対応が批判必至。

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