競馬PRESSBACK NUMBER

共同通信杯を前に振り返りたい、
ディーマジェスティの“奇跡の血統”。 

text by

平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

PROFILE

photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2020/02/14 19:00

共同通信杯を前に振り返りたい、ディーマジェスティの“奇跡の血統”。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

2016年の共同通信杯を制したディーマジェスティ。引退後は種牡馬となり、初年度は78頭に種付け。2021年に産駒がデビューする。

マカヒキを抑え、GIホースに。

 こうして重賞ウィナーの仲間入りを果たしたディーマジェスティだが、本当の意味で皆をアッと言わせたのは更に次のレースだった。

 管理する二ノ宮調教師はディーマジェスティを約2カ月後の皐月賞(GI、中山競馬場、芝2000メートル)に挑戦させる。

 共同通信杯では強い勝ち方をしていた同馬だが、まだ絶対の信頼を得たわけではなく、前走から微妙に間の開いたクラシック一冠目のこの舞台では8番人気。単勝は実に30.9倍。デビューからきさらぎ賞(GIII)まで3連勝のサトノダイヤモンド(栗東・池江泰寿厩舎)や、この時点で出走馬中唯一のGIホースだったリオンディーズ(栗東・角居勝彦厩舎、朝日杯フューチュリティS勝ちなど3戦2勝)がそれぞれ単勝2.7倍と2.8倍だった事からも、ディーマジェスティがダークホースの1頭と軽視されていた事が分かるだろう。

 ところがここでも同馬は大番狂わせを演じる。蛯名騎手にいざなわれ、道中は後方に位置したが、最後の直線では豪快な末脚を披露。2着のマカヒキ(栗東・友道康夫厩舎)に1と3分の1馬身差をつけ先頭でゴールに飛び込んでみせた。前走の共同通信杯勝ちがフロックでない事を証明すると共に、GIホースとなってみせたのである。

晩年は沈むも、重賞3勝は奇跡だった。

 さて、その後、日本ダービーに出走したディーマジェスティだが、この3歳の頂点を決めるレースではマカヒキ、サトノダイヤモンドに後れをとり、3着に敗れる。秋にはセントライト記念(GII、中山競馬場、芝2200メートル)を優勝したものの、菊花賞(GI、京都競馬場、芝3000メートル)で4着に敗れると、その後は本来の能力を発揮できずじまい。ジャパンC(GI)が13着で、翌'17年の日経賞(GII)と天皇賞・春(GI)はいずれも6着。

 その後、爪の不安などを発症し、懸命に調整されたが復帰のメドが立たず、ラストランから半年以上が過ぎた'17年11月に引退が発表された。

 晩年は残念な結果に終わってしまったわけだが、そもそもこの馬がGI皐月賞など重賞を3勝出来ただけでも実は奇跡といえた。もっと言えば、1つ勝てただけでも、競走馬としてデビュー出来ただけでも、いや、生まれてきただけでも奇跡なのであった。

【次ページ】 シンコウエルメスの系譜。

BACK 1 2 3 NEXT
#ディーマジェスティ

競馬の前後の記事

ページトップ