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小笠原満男がブラジルで見た競争力。
「うまくなる子は少しでも早く来る」
posted2020/01/05 08:00
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
Hirokazu Ikeda
「勝たせてあげたかった。個々の能力に差があったけど、やりようによっては勝てたと思うから」
今夏、ブラジルで開催されたジュニアユース年代の大会、日伯友好カップを終えて、鹿島アントラーズでアカデミーアドバイザーを務める小笠原満男は肩を落とした。どの年代においても、勝つことが飛躍的な成長につながるということを何よりわかっていたからだ。
ピッチ上において、出場した鹿島ジュニアユースの選手たちとブラジル人たちには様々な違いがあった。特に3つのポジションにおいて、大きな差を感じたという。
「サイドでボールを持てば常に仕掛け切るドリブラー、必ずシュートまで持っていくストライカー、空中戦で必ず勝つべく全力で競りにいくセンターバック。どれも日本とブラジルにおいては差があった。スコアだけを見ればいい試合をしたと取れるかもしれないけれど、1つひとつのプレーを見ると大きな違いがあった」
その差はどんな日常から生まれているのだろうか。
小笠原が驚いた「競争力」。
日伯友好カップへの同行を終えると、そのまま現地に残り、フラメンゴ、サンパウロ、バスコ・ダ・ガマ、フルミネンセ、パルメイラスと、5つの強豪クラブを視察した。小笠原の貪欲に学ぶ姿勢は、アテンドしたスタッフが「これまでも多くの視察をアテンドしたけれど、ここまでずっと見続ける人は初めて」と驚くほど。施設見学と合わせ、3日間で様々なカテゴリーの計16チームの練習を視察した。
「いろいろな話を聞いてものすごく勉強になった。一番すごいなと思ったのは、競争力だね。ブラジルのチームは、2カ月に1回とか定期的にセレクションをして、選手を入れ替えている。プロみたいだよね。毎回10人くらいがテスト生として練習に参加して、合格した選手の数だけ、もともといた選手が“明日からもう来なくていい”と告げられる。これこそ競争力を生んでいる環境だと感じた」
いつクビになるかわからない。テスト生として、ライバルたちがどんどん練習に参加してくる。そうなれば、選手たちが解雇にならないよう必死で練習する状況が生まれ、その競争が選手たちの能力を引き出すことにつながる。
「なかには親が子どものサッカーの成長のために、自分の仕事を辞めて一緒に練習しているという話も聞いた。子どもがサッカー選手になれば、家族を養ってくれる。親が働くことに時間を費やすのではなくて、子どもに養ってもらおうという考え。そこまでやるのもブラジルらしいなと思うよね」