ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太のボクシングが完成した。
5RKOで初防衛、視線は本当の頂点へ。
posted2019/12/24 11:50
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBA世界ミドル級チャンピオンの村田諒太(帝拳)が23日、横浜アリーナで挑戦者8位のスティーブン・バトラー(カナダ)に5回2分45秒TKO勝ち。夢のビッグマッチへの扉を開いた。
蓋を開けてみれば村田の快勝だった。世界初挑戦のバトラーは8割近いKO率を誇る強打者。24歳という若さもあり、打たれ脆さと経験不足を指摘されながらも、「どこか不気味」という印象を与えていた。
何よりバトラーにとってはキャリア初のビッグチャンス。失うものがない者の強みを発揮する可能性もあった。
しかし、村田の充実ぶりはそんな不安要素をあざ笑うかのようだった。
スタートから挑戦者にプレッシャーをかけ、ジャブを基点に主武器の右ストレート、さらには左ボディブローを打ち込んでいった。ディフェンスに難ありと見られたバトラーは村田の攻勢にブロッキングで対応しようと試みた。
村田とバトラーは似たタイプだが。
プロデビュー時からバトラーを取材しているというカナダの放送局、TVAスポーツのアンディ・マイリー記者の言葉を思い出した。
「バトラーと村田はともにパワーがあり、似たようなタイプだと思う。ただし、ディフェンスとジャブが村田のほうが上。もちろんバトラーもこの試合に向けて修正していると思うが…」
カナダ人記者の見立て通り、バトラーはチャンピオンに「ジャブが硬かった。KO率ほどパンチ力はないと思っていたけど、予想以上にパンチ力があった」と言わしめた。一方で村田の右は防いでいたものの、ジャブを被弾。短期間ではディフェンスの修正にも限界があった。
バトラーも村田の顔にあざを作るくらいの右を打ち込んだが、いかんせんグイグイと押し込まれているから苦しい。バトラーの右は距離を取った位置から踏み込んでこそ力を発揮する。押し込まれていては、その威力は半減してしまうのだ。