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村田諒太のボクシングが完成した。
5RKOで初防衛、視線は本当の頂点へ。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2019/12/24 11:50

村田諒太のボクシングが完成した。5RKOで初防衛、視線は本当の頂点へ。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

被弾もあったが、常に圧力をかけていたのは村田諒太だった。もう1つ上のレベルで戦えることを、彼は証明した。

確立された「村田のボクシング」。

 フィニッシュは時間の問題だったのだろう。5回、粘っていたバトラーが村田の右でついにグラつくと、村田は攻撃の手を休めずに右ストレート、左フックを決めてカナダ人の夢を打ち砕く。両腕を突き上げて喜びを表現する村田の表情が輝いていた。

 勝因は何かと問われれば、「前回の試合で自分のボクシングを確立できた」という村田の言葉がすべてではないだろうか。

 前に出てプレッシャーをかけ、しっかり手を出して、相手が嫌になるまで殴り続ける。言葉にすればシンプルだが、これがなかなか難しい。上体が立ってしまったり、強打を狙うあまり攻撃が単発になってしまったり。これまでの村田はいいときはいいが、ペースに乗り入れないと、どこかちぐはぐな印象を残した。

 それが7月のロブ・ブラント(米)戦で変わった。

 昨年9月、米ラスベガスでまさかの敗北を喫したブラントに2回TKO勝ちで雪辱をはたした試合を機に、村田はついに己のスタイルを手に入れた。前回のブラント戦はやや粗さも見られたが、この日の村田に迷いは一切感じられず、自らのボクシングの精度をさらい上げたと言えるだろう。

ミドル級の頂点に立つ2人と戦うために。

 この勝利により、村田は夢のビッグマッチに向けて大きな一歩を踏み出した。

 現在の村田は複数いる世界チャンピオンの1人にすぎない。夢とはミドル級で人気、実力ともにトップに立つ、WBAスーパー・WBC王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)、元3団体統一王者で現在はIBF王座を保持するゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と対戦することである。

 この話は村田が昨年9月、ブラントとの第1戦の前にも水面下で進められていた。しかし、村田は大きな目標を追いかけるあまり、伏兵と見られたブラントに足元をすくわれてしまったのだ。今回の試合にあたり、村田は将来についての質問には、具体的な回答を一切避けた。ブラント第1戦の教訓を肝に銘じていたからだ。

 バトラー戦に快勝したあとの控え室でも、村田は「こういうときは気が大きくなっているからいろいろ言いたくなるけど、一戦一戦やっていくだけ」とカネロやゴロフキンに関する発言は控えた。一方で、ビッグマッチへのレールを敷く準備は着々と進んでいるようだ。

【次ページ】 最大のターゲットはアルバレス。

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