話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
勝てば残留、負ければプレーオフ。
それでも湘南がピリつかない理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2019/12/04 11:40
7月に湘南ベルマーレへ「戻ってきた」山田直輝。残留を決めて、その意味を誇示したい。
「何も決まったわけじゃない」
先制ゴールで湘南の攻撃は加速したが、なかなか決定機を決められず、追加点を奪えなかった。後半、防戦一方になったが、GK富居大樹の好セーブなどで逃げ切り、湘南は8月11日のジュビロ磐田戦以来、実に11試合ぶりの勝利を挙げたのである。
ただ、山田は久しぶりの勝利にも表情は険しかった。
「今日の試合の勝利は間違いなく大きい。でも、何も決まったわけじゃない。次の松本戦で負けてしまうとこれまでやってきたことが何の意味もなくなるので、次の試合に向けてしっかりと準備していきたい」
11試合ぶりの勝利なのだ。嬉しくないわけがない。だが、山田の言う通り残留が決まったわけではないので、心の底から喜べる状況ではないのだ。
「湘南の選手は土壇場に強いというか」
ただ、山田はチームに不思議な雰囲気を感じているという。
例えば、試合前のロッカー内は残留争いの最終局面に来ているのにピリピリした感じがほとんどなかったという。
「FC東京戦も今日の試合もそうでしたけど、誰も口には出さないですけど不思議と最後には残れるという雰囲気があって……。僕は心配性なので、逆に大丈夫かなって思ってしまうんですよ。
前に浦和で残留争いをしていたシーズンがあったんですけど、その時は経験のある、実力がある選手たちなのにどうしようっていう雰囲気になっていたんで。でも、湘南の選手は土壇場に強いというか、どっしりとしています」
湘南は2010年シーズン以来、2013年、2016年、そして昨年と残留争いをしてきた。昨年も最後まで苦しい残留争いが続いたが、最終的に13位まで順位を上げた。湘南に漂う「生き残るのは自分たちだ」というムードを醸し出しているのは「残留争いを経験してきている選手が多いから」だと山田は言う。たしかに多くの選手に、残留のためにすべきことが見えているのだろう。