“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-17W杯、オランダ撃破は必然だった。
西川潤と若月大和が秘める強い意志。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/10/30 08:00
欧州王者のオランダ相手に2ゴールを決めたFW若月大和(右)。ゴール後にサブメンバーに駆け寄った。
A代表入りした鈴木武蔵先輩。
若月には「絶対に超えないといけない存在」がいる。それはコンサドーレ札幌のエースストライカーとして活躍する日本代表FWの鈴木武蔵だ。
鈴木は若月と同じ桐生第一高校の先輩にあたる。同じ早生まれの選手として2011年U-17W杯メキシコ大会に出場した。そこで日本の最高成績となるベスト8進出の立役者の1人となった。
「僕の中で桐生第一からA代表に入ることがずっと夢だったのですが、それを最初に達成したのが武蔵さんなんです。正直、誇らしい気持ちもありましたが、悔しい思いもありました。自分より先に達成されてしまったと思っているんです」
“桐生第一初のA代表選手”という看板は先に取られてしまった。偉大なる先輩の活躍はもちろん嬉しいが、これを本気で悔しがれるのが若月のメンタリティーの素晴らしさでもある。周りから見れば「何を言っているんだ」と思われてしまうかもしれないが、彼は至って本気だ。どんな目標でも本気で目指さないと意味がない。それに彼はその明確な目標からしっかりと逆算できている。
「自分をもっと変えていきたい」
「武蔵さんは僕とプレースタイルは違いますが、似ている点がたくさんあるんです。同じ群馬出身、同じ高校、そして高2のときはレギュラーではない、ということ。それでもU-17日本代表に選ばれて、W杯に出場し、高卒でプロ……。共通点が多くあるし、武蔵さんと同じ道を辿っているように感じるので、余計に意識をするんです。
その武蔵さんがA代表に選ばれたわけですから、僕もこれから1つ1つ積み重ねていけばA代表につながると思うんです。だからこそ、U-17W杯で活躍することは僕の中で物凄く重要なこと。ここで多くの経験を積んで、自分をもっと変えていきたいと本気で思っています」
別々の強烈な覚悟を持って臨んだU-17W杯。
森山佳郎監督がサンフレッチェ広島ユースを率いていた頃から選手たちに伝えている「気持ちには引力がある」という言葉を体現する2人。オランダ戦での2トップの躍動はある意味、必然であった。