球道雑記BACK NUMBER
ドラフト指名を諦めかけた日も……。
杉山晃基の「直球」は呼ばれるか。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2019/10/13 11:40
快進撃を続ける創価大の三本柱の1人。悔しさを力に変えて磨いた直球は、プロの舞台で見ることはできるか。
自信を取り戻した完投。
それから次の公式戦まで2週間が空いた。岸監督は、杉山、望月、小孫竜ニの4年生、3投手を監督室に呼んで、こんな話をした。
「(ネット裏に)スカウトいっぱい来て、ちょっと力んでいるんじゃない?」
「自分の持っているもの以上を出そうとするとダメ」
「もっと楽にやろうよ」
杉山もこの話を聞いて、少し気分が楽になったという。
そして9月21日から行われた秋季リーグ・共栄大学との試合では、第1戦、第3戦に先発し、ともに完投勝利。ドラフトという、秋の大目標に向けて、少しずつだが状態も上がって来た。
「内容としては、けっして納得いくピッチングじゃなかったんですけど、それ以前の4年春、3年春と秋のリーグ戦では、1つのリーグ戦を通して安定して投げることができなかった。そういった面ではこの前の共栄大学戦で1戦目と3戦目に完投できて、2年の秋以来に長いイニングも投げれたというか、久しぶりに良かったなって思いましたね」
12球団から届いた調査書。
その後も創価大学は快進撃を続け、リーグ最終節を待たずして関東地区大学野球選手権大会(横浜市長杯)の出場が決定。悲願である明治神宮大会優勝に向けて、まずは最初の関門をクリアした。
「ピッチャーは難しいですよ。ちょっとしたことでボールが走らなくもなるし、ちょっとしたことでコントロールを乱したり、投げ過ぎると肩や肘を壊したりと色々ありますからね。でも、その割にあの子たちは、きちっと練習もしますし、ケアもする。野球に取り組む姿勢が真摯ですよね。真面目にやっているから。だから思うんだけど、4年になったらみんな張りが出てきましたよ。そこできちっと自分の投球ができるように持ってくる。さすがだと思いました」(岸監督)
そんな杉山にはプロ12球団すべてから調査書が届いているという。
運命の日は10月17日――。
岸監督の表情もどこか満足気だった。