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イチロー、ガチ草野球で打率10割?
デビュー戦は「和歌山智辯」に決定。
posted2019/09/30 20:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
GettyImages
2018年11月3日。ほっともっと神戸では高校野球秋季近畿大会の準決勝が行われていた。
日頃、この球場で自主トレを行うイチローさんは、練習場所の確保ができず打撃練習などは諦めていた。時間を持て余したイチローさんはそれでも同球場に向かった。
「近畿大会のベスト4を見てみたいと思っていたので見に行ったんです。そうしたら、たまたま智辯和歌山と明石商業の試合だったんです」
高校生が野球に打ち込むフレッシュな姿も印象的だったが、イチローさんの目に止まったのは智辯和歌山の応援だった。
「感銘を受けました。ブラスバンドとチアと応援団、その3つが一緒に応援するスタイルです。まさに三位一体と言う印象でした」
イチローさんの心を打った三位一体の応援とは──。
感銘を受けたイチローさんがとった行動。
高校野球の応援は甲子園のアルプススタンドでも知られるようにブラスバンドやチアの応援は華々しく、見る者の心を打つ。
野球部同様に全国大会の常連となり、高校日本一に輝くような名門校も数多くあるが、イチローさんが感銘を受けた智辯和歌山のブラスバンドとチアと応援団のコラボはそういった技術の高さを売りにした類のものではなかった。
三位一体のブラスバンドとチアと応援団。主役はあくまでも戦う選手たち。選手に敬意を払い、彼らを支えようと懸命に応援する基本姿勢。イチローさんはそこに心を打たれた。
感銘を受けたイチローさんはその感動をすぐさま神戸の友人たちに話した。世間は狭い。なんと友人の一人が智辯和歌山の関係者と親しくあっという間にイチローさんの思いは学校側に伝わった。
学校側の動きも早かった。同校の名物応援楽曲『ジョックロック・イチローバージョン』を動画に撮影し、データとともにイチローさんに10曲ほどをプレゼント。思わぬギフトに大喜びしたイチローさんはすぐさま学校を訪問して藤田清司理事長に挨拶をし、御礼を述べた。