相撲春秋BACK NUMBER
元朝青龍「あの子は相当行くよ」
甥・豊昇龍に送った激励と力士の金言。
posted2019/09/28 09:00
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Kyodo News
元横綱朝青龍の甥、豊昇龍が新十両に昇進した。高校卒業後、立浪部屋に入門し、所要11場所でのスピード出世だ。切れ長の目で叔父の朝青龍を彷彿とさせるその顔を、記者会見の席でほころばせていた。
「おじさんにはまだ(昇進報告の)電話をしていません。ちゃんとおじさんに直接会ってから報告したいです」
という。すかさず傍らの師匠が、
「私からおじさん――朝青龍には話してはあるんですが、10月の2、3日とモンゴルに帰って昇進パーティを開くんです。こっち(豊昇龍)はおじさんを怖がっていて、あまり話が出来ないからね(笑)」
と報道陣を笑わせた。
絶対に相撲はやらないと思っていた。
入門以来、帰国するのは2度目となるという。今年、モンゴルの旧正月にあたる2月に初めて帰国。朝青龍は、「まだ早い。十両に昇進するまでは帰すな」と立浪親方に話していたのだという。それでも“親心”で帰国を許可した師匠だったが、直後の3月大阪場所での豊昇龍は、初日に白星をあげたものの3連敗を喫す。
「おじさんから電話が来て、すっごい怒られたんです。『これ以上負けたら許さないからな!』って」
この言葉に震え上がった甥は3連勝し、見事勝ち越しを決めた。
思い起こせば、叔父の“朝青龍時代”の活躍を知るも、まだ幼かったゆえに憧れることもなかったようだ。それどころか、「絶対に相撲はやらないと思っていた。周りの力士はみんな大きいし、僕は体が細かったから相撲が怖くて『絶対に嫌だ』と思っていた」と明かす。