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金子達仁が見たラグビーW杯開幕戦。
4年前とは自信の厚みが違った。
posted2019/09/21 12:40
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Naoya Sanuki
ガッカリした。
実は結構期待していただけに、「なんだ、こんなもんかよ」と捨てぜりふの1つも吐きたくなった。いや、当事者としてはできる限りのことをやったんだろうな、ぐらいのことはわかる。ひょっとしたら、何らかの規制があって、本当はできることを披露できなかった可能性だってある。
それにしたって、もうちょっと魅せてくれよ──ブルーインパルス。
せっかくラグビーワールドカップの開幕を盛り上げるために白羽の矢が立ったのに、たとえばインディ500のスタート直前にアメリカ空軍が披露してくれるド迫力のパフォーマンスに比べれば、物足りないことこのうえなかった。アメリカ空軍はサーキットのすぐ上を「ゴーーッ!」なのに、ブルーインパルスははるか上空を「スーッ」。最近のわたしが体験した痛みにたとえるなら、尿管結石(嘔吐しながら救急車)と軽めの痛風(歩いて通院)ぐらいの差があった。
あるいは、複雑骨折と突き指。
自国開催のW杯、2つのミッション。
さて、わたしが思うに、今回のワールドカップに出場する日本代表の面々は、密接に関係した2つのミッションを己に課している。
1つはもちろん、勝つこと。勝って、初の決勝トーナメント進出を果たすこと。
もう1つは、日本におけるラグビー人気、ラグビー文化の礎を築くこと。
ラグビーより一足早く地元でワールドカップを開催したサッカーは、決勝トーナメントに進出したことで揺らぎかけていた立場を一気に安定させた。それまで頻繁に聞かれた「サッカーは日本人に向いていない」といった声は、あの大会を境にほぼ絶滅した。
だから、1つ目のミッションをクリアできれば、そのままミッション・コンプリートとなるのもありえないことではない。ないのだが、しかし、もし2つ目のミッションがクリアできないのであれば、1つ目のミッション・クリアの持つ意味はずいぶんと軽いものになってしまう。
というか、2つ目のミッションがクリアできないようであれば、日本にとって今回のワールドカップは失敗である。