濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RIZIN王者・堀口恭司をKO!
朝倉海、大番狂わせの“必然”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by(C)RIZIN FF
posted2019/08/24 20:00
朝倉海の右のカウンターが見事に堀口恭司に刺さった瞬間! 世紀のアップセットは、ここから始まった。
那須川天心も絶賛した「勝因」。
歴史的番狂わせは偶然か、必然か。あまりの衝撃にファンも騒然となったが、闘いぶりと言葉から判断すると“必然”としか言いようがない。それを裏付けるのが、那須川天心のツイートだ。
「堀口さんを倒すならココだというタイミングを1発で狙って持って行きましたね。/ビビらなかったことが勝因だと思います。/素晴らしかったです!」
朝倉兄弟は、前田日明が設立した『THE OUTSIDER』から成り上がってきた。いわゆる不良格闘技イベントで、未来の“ケンカ伝説”もファンにはよく知られている。
だからといって“度胸一発”や“倒すか倒されるか”のタイプではない。未来曰く「格闘技とは種類が違いますけど、ケンカにも戦略があるんです。格闘技は相手の映像があるので、より細かい分析ができますね。相手を分析するのは得意なほうです。だから試合では思い通りの展開になることが多い」。
『THE OUTSIDER』時代から抜群の格闘センスを評価されていたが、仕事をしながらの練習は1日2時間ほど。地元の愛知県豊橋市では、MMAのスパーリング相手も少なかった。RIZIN参戦とともに東京に拠点を移すと、質も量もまったくレベルの違う練習ができるようになった。
兄・未来が海を格闘技に誘った理由。
「東京はプロの選手がたくさんいて、見ているだけじゃ分からない技術を教わることもできました」と海。つまり理由があり、理屈があっての強さなのだ。朝倉兄弟は勢いではなく“理”で勝っている。
春にインタビューした際、未来は海を格闘技の世界に誘った理由を聞かせてくれた。
「いきなり殴りかかった時によけたんですよ。その時、自分はケンカ無敗だったけど弟には殴っても当たらなかった」
怖くて目を閉じてしまえば攻撃を食らうことになる。“覚悟”があるからこそよけることができるのだと未来は言う。「弟は最初からそれができたんです」。
兄に才能を見出された時と同じように、海は堀口のパンチに対処したと言えるのかもしれない。そうして彼は世界に、世間に“発見”されたのだ。
「堀口選手に一番感謝しなきゃいけない。再戦するのが筋でしょう。ベルトをかけてやりたい」
試合後の海は言った。“堀口攻略法”のストックはまだあるらしい。もちろん堀口もさらに高度な戦略を練ってくるはずだ。今度はチャレンジマッチではない。ビッグネーム同士のメガファイトだ。