マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
今年の甲子園に漂う打撃戦の予感。
地方予選で見た本物の注目野手たち。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/08/04 11:50
履正社・井上広大が本格化してきた。大阪の代表校は、常に甲子園では優勝候補である。
春は星稜の奥川に翻弄されていたが。
予選のバッティングを見て、オッと思った。投手に背中を見せなくなった。この春のセンバツ、星稜・奥川投手の速球とスライダーに翻弄されていた頃は、踏み込んでいく時に、投手に背番号が見えるほど左肩が中に入って、内角球が視界から外れるから、そのぶん体を早く開いてスピードに負けまいとしていた。
そうすると、外の変化球にバットが届かない。内外どちらにも対応しきれなかったのが、両肩の線がまっすぐ投手に向かっていけるようになり、内にも外にも楽にバットが出せるようになって、彼本来の豪快な思い切りのいいスイング軌道が戻ってきた。
自分のストライクゾーンで、しっかりタイミングをとって本当の意味の「フルスイング」ができる。これまでのレフト方向ばかりじゃない。私には、甲子園のバックスクリーンへの弾道が見えてきている。
プロのクリーンアップが打てる酒井隼平。
高校生ばなれしたスラッガーとして期待したいのは、宇部鴻城・酒井隼平三塁手(3年・181cm90kg・右投右打)もだ。
背中をまっすぐに立ててグリップを高く掲げ、力を内側に絞って構える姿にスキがない。ふところを深くとって、そのままの姿勢で投球に踏み込んでいく。重なるのが、巨人・岡本和真の「踏み込み」だ。
レフト前ヒットかと思ったライナーが、そのままレフトフェンスを超えてスタンド中段に突き刺さった一撃には目をむいた。引っ張るだけかと意地悪く見ていたその後の打席で、ライト方向へ振り抜いて、外野に行ってからグンと伸びる打球になった。
この選手、一生懸命練習したらプロでクリーンアップが打てる資質あり……秘かに、そう見ている。