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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.1>
兄妹で目指す金メダル。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/06/27 10:45
左から、男子66kg級・阿部一二三(日本体育大学4年)、女子52kg級・阿部詩(日本体育大学1年)
一二三と詩、それぞれが語る現状。
世界柔道で連覇した一二三は、世界から追われる立場になった。国内外の選手から研究され、相手は対策を講じて試合に臨む。その影響もあってか、今年2月のグランドスラム・パリ、4月の全日本選抜体重別選手権では優勝を果たせなかった。
「ただ、そこまで研究されているとかを意識していないです。自分のことをしっかりやって自分の柔道をするだけと思っています。自分自身が成長することです」
一二三はきっぱり、そう語る。
詩は今、自身をこう捉える。
「自分の中では順調に来ていると思っています。でも、まだまだこれから」
課題も自覚する。
「試合ではメンタルがぶれない自信があります。ただ、練習でぶれたり気持ちのコントロールができなくなることがあります。逃げられたり、いやな組み手をされたときの我慢強さが足りないと思っているので、日々の生活の中で辛抱したりいやなことでも投げ出さずしっかり向き合うことが克服につながるんじゃないかと思います」
夢は、兄妹で同じ日に金メダル。
2人には共通の夢がある。2020年の東京オリンピックで、一緒に金メダルを獲得することだ。昨年の世界柔道同様、2人の階級は同日に実施される。つまり同じ日に、そろって金メダルを手にしたいと思っている。
「兄妹で同じ日に金メダルって、今までなかったと思うのでやりたいですね」(一二三)
そのためにも重要なのは、今年の2019世界柔道で優勝することだ。一二三は言う。
「勝ち切ることが来年につながると思っています。一本を獲りに行く自分のスタイルを見せて勝ちたいです」
詩も抱負を語る。
「東京で開催されるので、本当に私がいちばん強いということを示したいです。どんな相手が来ても必ず一本を獲って、東京オリンピックは(詩で)間違いないという圧倒的な強さを、怪物と言われるような柔道を見せたいと思います」
来年成し遂げたい大きな目標へ向けて、絶対に負けるわけにはいかない。
阿部一二三は3連覇を懸け、阿部詩は連覇をかけ、その先の未来も抱きながら、2019世界柔道に照準を絞っている。