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“ペインメイカー”クリス・ジェリコ。
IWGP王者オカダ・カズチカへ挑戦状。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/05/20 16:30
AEWの旗揚げ興行前のタイミングで挑戦状を叩きつけたクリス・ジェリコ。オカダは防衛なるか。
神出鬼没な男、手加減はない。
だが、6月9日、大阪城ホール「DOMINION」での2度目の防衛戦の相手は唐突にあらわれた。
クリス・ジェリコ。一方的にビデオメッセージを送りつけての挑戦の名乗りだった。
これまで、ジェリコは日本人では内藤哲也のインターコンチネンタル王座に触手を伸ばして来たが、ついにという絶妙のタイミングでオカダのIWGP王座への挑戦の意思表示だ。
「オレが勝つ!」という強い言葉を残して。
ジェリコは5月25日、アメリカで話題のオール・エリート・レスリング(AEW)の旗揚げ戦「Double or Nothing」(ラスベガスMGM Grand Garden Arena)で、ケニー・オメガと戦う。
ジェリコはAEWとは3年契約を結んだが、世界の中心にいるのはオレだ、と言わんばかりにその2週間後にはオカダを狙ってくる。
神出鬼没なこの男のプロレスの引き出しは無尽蔵で、手加減はない。そこまでやるのかと思うほど、非情だ。容赦のない攻撃は、痛みを直に伝える。「ペインメイカー」とはよく言ったものだ。
もちろん、オカダが相手だからこの用語を選んだのだろうが、言葉通りにオカダはジェリコからかなりの苦痛を味わうことになるのは避けられないだろう。
31歳で世界に頂点立ったジェリコ。
ジェリコは48歳になる。ベテランでプロレスの奥の深さを十分に知っている。同じ世代と戦うことに喜びを感じ始めた31歳のオカダに、オカダよりもずっと世界に名を馳せた17歳も年上の「おじさん」の挑戦状だ。
1991年、初来日のFMWからWAR、新日本と渡り歩いてジェリコは日本をよく知っている。
ジェリコが今のオカダと同じ歳の時、何をしていたか?
ジェリコは2001年12月にロックからWCWヘビー級王座、スティーブ・オースチンからWWF(現WWE)ヘビー級王座を奪って、2002年には「統一世界王者」としてレッスルマニア18のリングに立った。
手段はどうであれ、カナダ出身のジュニア・ヘビー級の体しか持っていなかった男が世界の頂点に立った時だった。
もう20年も続けているヘビーメタルのバンドFozzyの活動により精を出しているようにみえるが、「I am Jericho」はプロレスを忘れたわけではない。