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“ペインメイカー”クリス・ジェリコ。
IWGP王者オカダ・カズチカへ挑戦状。
posted2019/05/20 16:30
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
ペインメイカー。苦痛を与える男。
クリス・ジェリコは自らをそう呼んだ。そして、オカダ・カズチカのIWGPヘビー級王座への挑戦を表明した。
4月6日、ニューヨークのマジソン・スクウェア・ガーデン(MSG)で10カ月ぶりに、IWGP王座を奪回したオカダは、5月4日、福岡でライバルとして指名したSANADAの挑戦を退けて、IWGP初防衛に成功した。
ずっと、年上や年下を相手に戦ってきたオカダにとって、同じ年のSANADAとIWGPを争うことには格別の感があった。3月にSANADAを破ってニュージャパンカップに優勝した後、「持って来る物は持って来る」と誓った言葉にウソはなかった。
MSGのリングは一味違うものだった。
新日本プロレスの凄さを世界に見せるためにオカダは戦った。調子に乗り続けていたスイッチブレイドことジェイ・ホワイトを倒すには思いのほかてこずった。ドロップキック、レインメーカーを何度もぶち込まなければ、のらりくらりの26歳の王者を倒すことはできなかった。
レインメーカーでフォールを確信したオカダが、スリーカウントを奪えなかったときのその表情は、信じられないものに遭遇した時のものだった。必殺のレインメーカーがいいタイミングで決まったのに跳ねのけられたのだ。
MSGでのレインメーカー、ライバルとの防衛戦。
かつて、日本プロレス時代、ジャイアント馬場のドロップキック、32文ロケット砲が決まったのに、ボボ・ブラジルが立ち上がってきたことがあった。あの時、馬場は、インターナショナル王座をブラジルに明け渡してしまった。
そんな記憶が脳裏をよぎった。
だが、オカダは意を決したように戦い続けた。最後は、パイルドライバーから、レインメーカーで王座を奪回した。
そんなMSGを挟んだSANADAとの2番勝負はオカダにさらなる復調を感じさせるものがあった。「何度でもやってやる」的なライバルSANADAへの思いも如実に表れていた。