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登山届は遭難の「後」に役に立つ。
条例が増加中、報道には違和感。

posted2019/04/28 09:00

 
登山届は遭難の「後」に役に立つ。条例が増加中、報道には違和感。<Number Web> photograph by Shinichi Yajima

南アルプスの畑薙大吊橋登山口にある登山届ポスト。

text by

森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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Shinichi Yajima

 日本で登山をする際、入山料などはとくに必要ない。これは多くの方が認識していることだと思う。

 では、入山許可や登山届が必要かどうかは?

 答を言ってしまえば、これも必要ない。登山届を出さずに山に登ったところで罰せられたりすることはないのである。この事実は意外に感じる方が多いのではないだろうか。

 厳密に言えば、富士山や屋久島では「保全協力金」の名で1人1000円を徴収しているし(ただし支払いはあくまで任意)、浅間山や桜島などの活火山では山頂地域への入域を禁止している。北アルプスなどの一部では、入域こそ禁止してはいないものの、登山届の提出を義務化しているところもある。

 ただしこれらは例外であって、原則的には、日本の山は「無料で」「許可なく」登ることができる。それが現在の日本の法体系なのだ。

 まずはこのシンプルな原則を押さえたうえで、現在起こっていることを記してみよう。

登山届を義務化する条例が次々と。

 ここ4、5年の間に、登山届の提出を求める条例が次々に施行されている。時系列で記すと以下のとおりだ。

2014年 北アルプス立山室堂地区(一部期間のみ)
2014年 北アルプスの岐阜県側一部エリア
2015年 御嶽山および焼岳(北アルプス)
2015年 焼山(新潟県)
2016年 長野県内の主要山岳(計168エリア)
2016年 白山
2018年 富士山、南アルプス、八ヶ岳の山梨県側一部エリア

 これらの登山届の提出はほとんどが「努力義務」であって、提出しなかったからといって罰せられるようなものではない。罰則規定を設けているのは、「北アルプスの岐阜県側一部エリア」と「焼山」のみである。しかもこの2つの山域でも罰則を適用するエリアや条件はかなり限られている。

【次ページ】 “普通の”登山者を想定した条例。

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