草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
「あなたはサイン盗みをしていましたか?」
プロ野球関係者30人への衝撃アンケート。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2019/04/10 17:30
3月28日に行われたセンバツ大会の2回戦。1-3で敗れた星稜・林和成監督が試合後、習志野の控え室を訪れ、抗議した。
「サインを解読する知恵すらなかった」
<全否定>
実は筆者も意外なことに、これが最も多かった。
「イメージ的にはやってそうな学校だと思われますが、本当になかった」(40代、東北地方、出場有、優勝無)
「恩師は細かい野球で有名な某名門のOBだからいろいろなテクニックは教わりましたが、それだけはなかった」(40代、関東地方、出場有、優勝無)
「うちは古豪ですが、少なくとも僕たちにはサインを解読する知恵すらなかった。正直、プロに入ってからそういう野球の存在を知りました」(40代、東海地方、出場有、優勝無)
以下、20代から50代までの自身を含む優勝経験校の出身者8人、自身が甲子園に出場した4人、出場できなかった4人が「やってなかった」と口をそろえた。
大学、プロ経験者が指導者となり……。
時効だから正直に話せる人間と、匿名であっても秘密は墓場まで持って行く人間がいる。ただし、この全否定派も含めた中に「大学ではあった」「プロではやった」という人間が少なからずいたことは聞き逃せない。下部との入れ替えがあるリーグでは特に「あった」という証言が多かった印象だ。
つまり、大学やプロで「高度な野球」を経験した人間が指導者となり、「技術」として高校に還流した可能性が高い。
「昔の選手宣誓は必ず正々堂々戦いますという文言が入っていたでしょ? 勝つことよりも過程が大切だと今の指導者は教えていないんですよ。プロでもそう。自分でクセを分析するんじゃなく、仲間にサインを教えてもらって打っているやつは頭にぶつけられても文句は言えない。ところが様々な防具が進化して、その覚悟もないままにそうした行為がはびこっているんですよ」(60代、関東地方、出場有、優勝無)
なぜエースだけにひたすら投げさせるのか。なぜサインを盗み、打者に伝えようとするのか。枝は分かれて見えるが、根は同じである。「サイン盗みは退場にしろ」「反則負けでもいい」。厳罰主義を唱えるのは正しいように見えて、実は安易である。
根を直さなければ何も変わらない。