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アリの晩節から考える、ボクサー引退の難しさ。~メイウェザーは本当にタイ記録でリングを去るのか~
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph byGetty Images
posted2015/09/30 06:00
ホームズに11回TKO負けを喫したアリ(右)は翌年にトレバー・バービックに敗れて引退。
先日、'10年にESPNが製作したドキュメンタリー番組「さらば モハメド・アリの時代」の再放送を、仕事の締め切りに目をつぶって、つい最後まで観てしまった。
'80年10月に行なわれたモハメド・アリ対ラリー・ホームズ戦を当時の映像と関係者の証言で回想する内容だったが、この世界ヘビー級タイトル戦は“グレーテスト”アリの数々の名勝負に含まれる試合ではない。それどころかアリが無敵王者ホームズに挑んだものの、往時とは別人の衰えぶりをさらし、途中ホームズがストップを望んだほどの惨敗となった。
次の最終戦とともに「アリがやってはいけなかった最後の2試合」としてしばしば取り上げられる。引退時期を誤ったおかげで、余計なダメージを蒙ったというのだ。いまアリが抱えるパーキンソン症候群は、パンチドランクとは直接関係がないともいうが、“ルイビル・リップ”とあだ名され、立て板に水のようにしゃべったアリが、もの言わぬ人になってしまった姿を見るのは悲しい。