ブックソムリエ ~必読!オールタイムベスト~BACK NUMBER
氷の世界で飢餓と戦い、生き抜いた
28人の冒険記。~9カ月の漂流で隊員を
統率しきった見事なリーダーシップ~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2016/11/30 16:30
『エンデュアランス号漂流記』アーネスト・シャクルトン著 木村義昌・谷口善也訳 中公文庫 781円+税
南極点への先陣争いはノルウェー隊が勝利し、敗れたイギリス隊は帰還中に全員が遭難死した。その2年後の1914年、すでに2度の南極探検を経験していたシャクルトンは、「のこされた一大目標」、南極大陸横断に挑んだ。「だがわれわれはこの目的に失敗した。本書はそのときの探検物語である」。
28人の探検隊を乗せたエンデュアランス号は、氷海に捕まり立往生し、彼らは南極大陸に上陸すらできなかった。流氷に囲まれた9カ月の漂流。途中で船は氷の圧力に押しつぶされる。危険な浮氷上で3カ月もの過酷なキャンプを強いられたシャクルトンは、150km離れた無人のエレファント島への脱出を決断する。犬は射殺して食料とし、一行は3艘の救命ボートに分乗、氷の海を必死に漕ぎ続け、島に到着した。