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大坂なおみが「感情の揺れ」を克服。
かつてお手本にしたプリスコバ超え。
posted2019/01/24 18:10
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
一昨年の秋、『Number』937号で大坂なおみにインタビューした時のことだ。
彼女はその年、2017年に経験した最も学びの大きかった試合について話してくれた。
「8月、トロントで行われたロジャーズ・カップのベスト16で、ランキング1位だったプリスコバと対戦したんです」
第1セットはプリスコバが取り、第2セットは大坂がタイブレークの末に取り、1セットオール。第3セットの第1ゲームが終わったところで大坂が棄権してしまったが、この試合の内容から見て、大坂の「出世作」と言ってもいい試合だった。
この試合を通し、大坂はプリスコバのコート上での“たたずまい”が勉強になったという。
プリスコバはポイントを取って喜ばず、失ってもまったく動じることなく、次のポイントに向かっていく。
「世界のトップって、こんなに冷静なんだなと感じました。当時、私はリードしているのにミスをするとイライラして流れを失ってしまったり、感情の揺らぎに課題を抱えていたので、プリスコバのスタイルがとっても参考になって」
あれから1年5カ月、4度目の対戦。
トロントでの対戦から1年と5カ月。4度目の対戦は全豪オープンの準決勝。この対戦、ふたりの感情の揺らぎが勝敗を分けた。
この試合で大坂は、試合開始からポジティブなオーラを放っていた。
ポイント間には小さく拳を握って自らを鼓舞するようにし、ゲームを失ってもネガティブな表情を出さず、感情の切り替えがうまくいっていた。
第1セット、6-2。このままであれば、楽勝とさえ思われた。
しかし、ゲームカウント4-4で迎えた第2セット第9ゲームに破調をきたす。