球道雑記BACK NUMBER
新人王資格を残してのロッテ2年目。
安田尚憲に全国区スターの期待感。
posted2019/01/21 10:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
しんと静まり返ったロッテ浦和の室内練習場。
入口を開けると左奥にあるブルペンから、まるでボクサーがサンドバッグでも打っているような「ドスン、ドスン」という鈍い音が聞こえてきた。
そこに目を向けると、六尺二寸(188cm)の大男がブルペン内の壁にボールをぶつけ、その跳ね返りを何度も、何度も拾っている。
野球少年なら必ず家の壁、もしくは公園の壁を使ってやったことがあるだろう、いわゆる“壁当て”を、ときに左右にボールを振りながら、ときに大きなバウンドになるように様々なケースをイメージして、千葉ロッテ・安田尚憲は約10分間それを続けていた。
「オフシーズンはここでよくやっています。壁さえあれば1人でもできることなんで。履正社(高校)の壁でもやっていましたし、ここ(ロッテ浦和球場)でもたまにやっています」
12月にウィンターリーグ参加。
この日、彼は午前中に公益財団法人日本サッカー協会が主催する「JFAこころのプロジェクト」の講師役として招かれ、東京都渋谷区の小学5年生15名を相手に「夢を持ち続ける大切さ」を語ってきた。通称“夢先生”と呼ばれている授業だ。
球場に到着したのは授業後、夕暮れ前の時間帯になってからだ。その遅れをその日のうちに取り戻そうと、彼は室内練習場で1人になっても、集中を途切れさせることなく、自主練習をきっちりとこなしてから、1日を終えた。
置きティー、マシン打撃、そこから壁当てを行って約2時間。あくまで「体がなまらない程度」の軽いものだったと彼は言うが、昨年の秋季キャンプ終了後から12月中旬までの約1カ月間、台湾のウインターリーグにも参加し、実戦を積み重ねたことも考えれば十分すぎる時間である。
「12月まで実戦をさせてもらえたのは凄く有難かったですし、そこで気付くこともたくさんありました。本当に行って良かったですよ」
そう話す彼の表情は、昨年よりも精悍さが増しているようにも見え、今季の飛躍を予感させた。