【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
池田純が語るドラフト会議の考え方。
大切なのは、外れ1位と成功の基準。
posted2018/11/01 11:00
text by
池田純Jun Ikeda
photograph by
Yuki Suenaga
10月25日(木)、プロ野球ドラフト会議が行なわれるちょうどこの日に、私にとっての「THE監督」、中畑清さんがまさかNumber Sports Business Collegeにお越しいただけるとは思いませんでした。
私がベイスターズの球団社長で、中畑さんが監督だった時期は、ドラフトでは「とにかく即戦力!」となり、初年度は100敗するのではないかというほどチーム状況が苦しかったです。
苦節7年の時を経てあの時から見違えるほどのチームに成長したことに、当時を思い出すと感無量ですよね。“あきらめない野球”でチーム改革がはじまり、戦い方が変わり、粘りが出て、7点差を何度もひっくり返すようになりました。戦いの裏にある「編成」「ドラフト」、高田繁GMとスカウト達の力も非常に大きくチームに作用したでしょう。
ドラフトの成功の基準は?
ドラフトに関して、GMから数多く学ばせていただいた中でずっと心に刺さっている言葉として、「外れ1位が重要だ!」という言葉をよく思い出します。
各球団のスカウトたちが考えた末の1位指名は競合するのが当たり前。しかもそれをくじで決めるのですから、外れても仕方ないくらいの気構えでいなければなりません。選手の人生に関わることですからくじと言えども責任がありますが、あくまで合理的客観的に経営の視点で言えば、ある種の割り切りをしないと冷静に戦略をたてられないのです。
余談ですが、当時は控え室に抽選箱を用意し、事前にくじの雰囲気を球団のドラフトに関わるメンバーで盛り上げたりしていたこともありました。
以前、私が独自にドラフトの成功率を計算してみたことがあります。「3年連続一軍で活躍する」というのを成功の指標の軸として全球団10年分ほど計算したのですが、ドラフト1位の成功率は50~70%。そこから順位が1つ下がるごとに10%ずつ成功率が下がっていくんです。
1位の契約金は8000万円から1億円、年俸も約1500万円。順位が1つ下がるごとに1000万円単位で契約金も下がっていって、年俸も1000万円を切るまでになってくる。
FAで数億円を拠出して他球団から主力を連れてくることを考えても費用の差は明らかで、ドラフトでいかに成功する選手を獲得できるかが重要です。