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FC東京時代から何も変わっていない
「ドリブルおばけ」中島翔哉の本質。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/20 10:00
中島翔哉が仕掛ければ何かが起こる。その期待感はサッカーファンにとって共通項だ。
FC東京時代と同じ“らしさ”。
驚いたのはともにピッチに立った長友だけでない。記者席からも中島がグイグイと前に突き進んでいくプレーに多くの感嘆の声が挙がった。
ドリブル、突破力があるから、もう1つの武器であるシュート力も生きる。敵のDFはドリブルを嫌がれば距離を取る。そうなれば中島はゴールめがけて打つのみ。間合いを詰めてきたなら、テクニックと俊敏性を使って抜き去る。加えて、彼は体格の割に身体のぶつかり合いに強い部分も武器としている。
このすべて、そしてウルグアイ戦でも見せた彼のプレーは、実はFC東京時代にもピッチで表現していた中島らしさそのままなのである。
中島の縦に、前にひたすら向かう力強いプレーは、場合によっては強引、もしくは無謀といった表現とも紙一重になる。それは、特にJリーグでは裏目になることも多かった。Jクラブは個人の突破というよりも組織で攻め、守る傾向が強い。当時のFC東京も例に漏れず、その中で常に“個”を強調したプレーを見せていた中島は、時に浮いた存在にすらなることもあった。
国際舞台の方が良さが生きる。
実際、味方を使った方が効率的に攻められそうな場面でも、単騎で敵陣に突っ込んでボールを奪われるシーンがたびたびあった。それがFC東京時代に浮いて見えた理由である。今回のウルグアイ戦でもプレーをじっくり振り返ると、実は同様の場面が散見された。やはり中島のプレーは変わっていないのである。
それでも国内ではそれほど目立った結果を残せなかった中島が、ポルトガルや代表の舞台では活躍している。それは彼は高いインテンシティやスピーディーな展開が繰り返されるサッカーにおいて輝きを放つタイプだからだ。そして局面での1対1の勝負が強調される国際舞台の方が、テクニックとスピードが生きやすいのである。
ウルグアイ戦の日本が見せたように、仮に中島がボールを奪われても、現代サッカーを生きる欧州や代表レベルのプレーヤーは、皆が攻守の切り替えが速く、さらに球際での強度の高さも求められる。彼のボールロストがJリーグでプレーしていた頃よりもチーム全体の大きな傷=ピンチや失点につながっていないのは、そんな味方との補完関係も存在する。