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女子水泳界では異例の「遅咲き」。
大橋悠依が史上初のメドレー2冠。
posted2018/08/19 09:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
堂々の勝利だった。
8月9日から12日にかけて行なわれたパンパシフィック水泳選手権で、大橋悠依は400m個人メドレー、200m個人メドレーの2冠に輝いた。
「言い訳になりますが、ゴーグルに水が入って集中できませんでした」
そう振り返った400m個人メドレーだったが、最初のターンから先頭に立ち、そのままゴール。
200m個人メドレーは、「前半から行きそうな選手がいなさそうだったので」と、前半から積極的に行くと、やはり一度も先頭を譲らずに泳ぎ終えた。それは日本女子では初の個人メドレー2冠でもあった。
「金メダルを獲って、東京オリンピックにつながるように、ステップアップしていきたいです」
抱負をこう語った今大会は、海外勢の顔ぶれを見れば勝ってしかるべきレースではあったが、それでも自身の目標と周囲の期待に応えての優勝は見事の一言に尽きる。何よりも、レース前後の物腰は、貫禄を感じさせるほどだった。
高校時代はほとんど無名。
だがこの数年をあらためて考えれば、今大会で見せた成績と姿は驚きと言ってもよい。「遅咲き」という言葉が相応しい足跡をたどってきたからだ。
競泳の場合、日本代表として活躍する選手はたいてい中学、高校時代に台頭する。一方で大橋は、高校時代は全国大会のレベルでめざましい結果を残していたわけではなかった。東洋大学に進んだあとも、状況はしばらく変わらなかった。
象徴的なのは、大学2年生で迎えた2015年4月の日本選手権だ。200m個人メドレーに出場した大橋は、出場40人中40位、つまり最下位に終わったのだった。