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女子背泳ぎ復権を託される若手3人。
酒井夏海、小西杏奈、赤瀬紗也香。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/08/05 11:00
酒井夏海は日本選手権で高校新をマーク。パンパシで上位に食い込めるか。
159cmでも筋力で負けない小西。
背泳ぎ復権の期待を担う1人は小西杏奈(22=中京大)。今春の日本選手権100mで派遣標準記録を突破、初めて主要国際大会の代表をつかんだ。
身長159cm、競泳選手としては決して恵まれていない。それを自覚し、どう補い、対峙するかを考えた。
結論は、「筋力で負けない」ということだった。ウェイトトレーニングなどに地道に取り組み、図抜けた筋力を身につけた。スタートの良さもあいまって、タイムを伸ばし、大学4年生にしてつかんだ代表だった。
「寺川さんが引退したあと、日本の背泳ぎが弱いと言われています。(寺川を)抜かしたいです」
積み重ねてきた時間に育まれた自信もあるだろう、小西ははっきり、今後を担う決意を語る。
中学生で五輪の魔物を経験した酒井。
小西と対照的なのが、酒井夏海(17=武南高)だ。
175cmの長身を誇る酒井は、ジュニアの頃から注目されてきた。一躍名をとどろかせたのは、中学3年だった2016年。日本選手権100m、200mで優勝し、この活躍によりリオデジャネイロ五輪に20年ぶりの中学生代表として出場する。
しかし、大舞台の水は苦かった。100m予選は自己ベストから1秒以上遅れて全体の26位。準決勝に進めずに終わった。
「こんな大きな舞台で泳いだことがなくて、歓声もすごくて……。緊張に押しつぶされてしまいました」
涙が止まらなかった。本来の調子を取り戻せず、続く200mも予選敗退となった。その後、怪我の影響などもあって伸び悩み、2017年は世界選手権代表を逃したが、そのままでは終わらなかった。