ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
ティキタカの終焉とサッカーの進化。
オシムが語る、決勝前に考えるべきこと。
posted2018/07/15 11:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
イビチャ・オシムに電話をしたのは、延長の末にマリオ・マンジュキッチのゴールでクロアチアがイングランドを下し、初の決勝進出を決めた直後だった。だが、電話口の向こうから聞こえてくる彼の声は、意外なほどに落ち着いていた。
オシムはこの試合に何を見たのか。そして決勝に何を望むのか。オシムが語った。
クロアチアの敵は自分たち自身でもあった。
――元気ですか?
「ああ、当然だろう」
――厳しい試合でしたが、結果はクロアチアに望ましいものになりました。
「この大会では多くの試合がこんな風に決まった。生きるか死ぬかの厳しい戦いの結果だ。心臓の弱い人間が見ていたらショック死を起こすような試合だった。
クロアチアはずっと自分たちのスタイルを維持し続け、自分を信じながらプレーし続けた。最後はそれが報われると信じながら」
――イングランドに先制され、前半はペースをまったく掴めませんでした。
「だが選手たちは、それでも前に進もうとした。それが結果に繋がった。
先制点を喫した後は、相手への敬意を強く抱きすぎた。もう一度、力を再編成しなければならなかった。それはイングランドという相手との戦いであると同時に、自分たち自身との戦いでもあった。最終的にはそれが報われた。(決勝進出という)正当な報酬を受け取ることができたのだから」
――ラウンド16以降の戦いはすべて延長戦で、PK戦も2度ありすべて厳しいものばかりでした。
「ここまでの彼らの戦いは、どれも喉元にナイフを突きつけられたようなものばかりだった。フィジカル面もとてもきつく、この試合でも重要な要因となった。
しかし彼らは、必要なときに常に必要な力を見いだしてきた。
イングランドにも60分過ぎまで0対1とリードされたが、モドリッチが率先してチームメイトを鼓舞し続け、チームの攻撃をリードした。同点ゴールはイングランドの先制点からほぼ1時間後で、じっと耐えながら反撃の機会をうかがい続けた結果だった。延長に入ってからもゴールを目指し続け、その姿勢が決勝ゴールを生んだ。そうしたことの末の勝利だった」