猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ増井浩俊は見た目以上に貪欲。
「僕は記憶より記録で残すタイプ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/07/12 07:00
5年ぶり3度目の出場となるオールスターに選出され、オリックスのファンはもちろん、古巣・日本ハム時代のファンにも感謝した。
チーム第一でも、タイトルは貪欲に狙う。
日本ハムでは2012年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得し、その後クローザーを任された。'16年はチーム事情で先発を務め10勝を挙げたが、昨年は再びクローザーに。そして昨年オフ、FAでオリックスに移籍した。先発ではなく抑えとして望まれたことがオリックスを選んだ理由の1つだった。
オリックスでは、メジャーリーグ・ダイヤモンドバックスに移籍した平野佳寿のあとを引き継ぎ、今季開幕から守護神として、防御率1.56の安定した投球でセーブを積み上げている。
ただ4-2で勝利した5月1日の埼玉西武戦は、9回のマウンドに山本由伸が上がり、山本にプロ初のセーブがついた。増井はそれまで3連投していたため、その日は休養に当てられたせいだが、悔しそうにこう振り返った。
「ああいう試合は(セーブがつかない)大差で勝ってほしいなと思いますね。もったいなかった(笑)。でも翌日にもセーブシチュエーションがきて、そこではセーブを取れたので、『1日休んどいてよかったな』と思いましたけどね」
もちろんいつもチームのためを第一に考えて戦っている。それが伝わるから北海道のファンにも愛されたのだろう。ただその中で、狙えるタイトルは貪欲に狙う。それがモチベーションにもなっている。
交流戦最終戦、MVPをかけてマウンドへ。
交流戦では、可能性のあったMVPを逃しておおいに悔しがった。
今年の交流戦の最高勝率球団は東京ヤクルトだったが、MVPは通算勝利数で勝ち越したパ・リーグの中で勝率1位だったオリックスから選ばれた。交流戦最後の6月21日の阪神戦を前に、それまで6セーブ2ホールドで防御率0.00だった増井や、吉田正尚、山本といった名前が候補に挙がっていた。
その阪神戦で、増井は3-2と1点リードの9回裏にマウンドに上がったのだが、糸井嘉男に手痛い本塁打を浴び追いつかれてしまった。結局、MVPは吉田正が受賞した。
「セーブシチュエーションでうまく回ってきたので、これ(セーブを)取れたらあるかも、という意識はちょっとありましたけど、糸井さんがやってくれましたね。
まあでも正尚が獲ったんで。やっぱりね、そういうスター選手が獲るようになってるんだな! と(笑)。そういう選手なんだなと思いましたね。
あの最終戦も正尚は2安打して打点も挙げていましたから。正尚がタコってたらあったかもしれないですけど、打っていたので『あ、これはもう決まりだな』と思ってました(笑)。
そりゃあ欲しかったですよ。だって交流戦のMVPなんてそうそう獲れないっすもん。12球団の中で1人ですから」