オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋大輔がほんとうに戻ってきた。
「自分だけのためにやっていきたい」
posted2018/07/03 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
消しても消せなかった思いは、やはり、抑え切れなかった。
2018年7月1日、高橋大輔が現役復帰を発表した。
競技生活から退くことを公にしてから4年弱。32歳での決断である。
同日の夜、東京都内で行なわれた記者会見は、当日のリリースにもかかわらず数多くの記者が集った。
テレビカメラが並ぶその前に、高橋は照れたような笑顔で現れた。
「現役に戻りたいと最終的に決断したのは、昨年の全日本選手権の後です。引退してから4年間、ニューヨークに行ったりテレビのお仕事をさせてもらったり、いろいろな方にお会いして第一線でやっている方たちの姿を見ながら、自分の中で『これが本当に自分のやりたいことなのかな』という思いが徐々にふくれ上がっていきました」
2014年10月、引退記者会見では「すっきりした気持ちです」と言いつつ、違う思いがあることも明かしていた。
「正直、現役に未練がないわけではないです」
スケートの次の大きな夢を探し続けていた。
集大成と位置づけていたソチ五輪シーズン。だが、ソチ大会は怪我の影響もあって6位にとどまった。何よりも、心から納得の行く演技を披露できなかった。翌月の世界選手権も欠場しての引退表明だった。引退セレモニーの類も行なわないまま、退いた。
以来、自分のいるべき場所を探し続けてきた。
同年末のアイスショー「クリスマスオンアイス」ではこう語っている。
「次の大きな夢だったり目標というものを自分の中にみつけられる1年にしたいと思います」
その翌年、ニューヨーク留学から帰国したあと、「今を楽しんでいます」と笑顔を見せながら、こう続けた。
「充実していたのは、スケートをしていた今までの時間。これからのことはまだ見えてはこないですね」