オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋大輔がほんとうに戻ってきた。
「自分だけのためにやっていきたい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/07/03 17:00
キャスターとしての活動も好評だったが、高橋大輔にはやはり氷の上がよく似合う。
「今回は、自分だけのためにやっていきたい」
遠い先は見ていない。どんな結果を残せるかも分からない。それでも復帰へと促した原動力を、こう語る。
「いちばんは、自分にはフィギュアスケートが軸にないと駄目だなと思ったことです。今後の生活をしていく上で、しっかりしたものを持っていなければ自分らしく過ごせないな、と」
今も、かつて手術とリハビリを余儀なくされた右膝のケアを怠ることはできない。長期間のブランクもある。30代という年齢もまた、フィギュアスケートではハードルとなる。
それでも、最後まで、心の底からやり尽くしたと感じられなかった4年前の思いは抑えようがない。
「今回は、誰かのためにというのではなく、自分だけのためにやっていきたいと思っています」
挑むことがアスリートの本能なら、あの時かなわなかった思いに、困難を承知で真っ向から立ち向かおうとする高橋もやはり、真のアスリートである。
あらためてそう感じさせた復帰会見で、柔和な笑顔、でもその中に時折強い眼差しを見せた高橋大輔は、自分にけりをつけるために、先へと進むために、再びリンクに立ち続ける――そう、ほんとうに、戻ってきたのだ。