オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋大輔がほんとうに戻ってきた。
「自分だけのためにやっていきたい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/07/03 17:00
キャスターとしての活動も好評だったが、高橋大輔にはやはり氷の上がよく似合う。
勝てないならやるべきではないと思っていた。
テレビのキャスターにも挑戦した。大会では競技を終えた選手に真摯に向き合い、その胸中を引き出した。高橋ならではであったが、それでも長くとどまる場所とは思えなかった。
自分はどこにいるべきか――おそらくは時間を経るなかで膨らんできたであろう思いの後押しをしたのは、後輩たちだった。
全日本選手権には五輪代表を懸けて滑るスケーター、長期にわたる怪我を克服し這い上がろうとするスケーター、最後の晴れ舞台として臨むスケーターがいた。順位にかかわりなく、1人ひとり、懸命の姿があった。
「これまでは勝てないんだったら現役をやるべきではないと思っていたのですが、それぞれの思いの中で戦うというのもいいんじゃないかと思いました」
「トリプルアクセルまでは戻っています」
選手としてリンクに戻ることを決意すると、4月から徐々に練習を再開。ジャンプは「トリプルアクセルまでは戻っています」。
新プログラムの振り付けは、ショートプログラムはデイビッド・ウィルソン、フリーはブノワ・リショーに依頼した。
「デイビッドは、(引退前に)一回しかお願いしたことがないんですけど、すごく気に入っていたので。リショーさんは、坂本花織ちゃんのプログラム(『アメリ』)を観て、素敵なプログラムを作るなと思いました」
フリーは完成し、ショートはこれから作業が始まるという。
今後、8月末の「フレンズオンアイス」に出演。「はっきりとは言えないですけど、間に合えば」と、新プログラムを披露する可能性を示唆する。
その後、10月の近畿選手権、11月の西日本選手権を経て、12月の全日本選手権を目指す。
全日本選手権で表彰台は? と尋ねられると、高橋は答えた。
「今の段階では難しいと思いますけれど、練習していく中でもしかしたら見えてくるかもしれないですし、その先にもし何かがあれば、そこを目標にするかもしれないですし、しないかもしれない。それは全日本選手権が終わった後にしっかり考えたいと思います」
「1年限定のつもりですが、過ごしてみて気持ちが変わるかもしれないので、まずこの1年を」