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柴崎岳はどこまでも満足しない男。
「世界のトップに入れる日のため」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2018/07/02 12:15

柴崎岳はどこまでも満足しない男。「世界のトップに入れる日のため」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

ロシアW杯で存在感を高めた選手の1人である柴崎岳。しかし向上心の塊のような男は、ここで満足感を覚えることはない。

W杯前後で変わった自らの立ち位置。

 もしハリルホジッチ体制で臨んでいたら、柴崎の先発起用の可能性は小さかっただろう。縦に速い攻撃を好む前任者のサッカーでは、違うタイプの選手が求められていたはずだ。

 しかし「日本らしいサッカー」を掲げる西野朗監督のもとで、柴崎は輝いている。日本人選手を活かすためには、柴崎は欠かせない存在だ。同時に柴崎が仕事をするためには、前線からの連動した守備やチームメイトの運動量が不可欠になる。

「W杯が始まる前は、自分がそのピッチで中心選手となるというイメージは、まったくなかったですね。いつの間にかというか……自分自身は本当に必死にやっているだけ。サッカー選手として成長したいという気持ち、あとは結果に貢献したいという気持ち。そのふたつを常に持ってやってきている。そういった気持ちを持ち続けてきたことが、今に繋がっているのかなと思っています」

「過去の理想と対比することはない」

 '09年のU-17W杯に出場した代表の10番をつけ、プラチナ世代の旗手と呼ばれた柴崎だったが、彼が日本代表の柱になるためには9年間の時が必要だった。残念ながら、17歳の少年が描いた未来予想図通りに現実は進まなかった。

「昔は年齢を気にするというか、どういう年代でどんな立ち位置で、どういうプレーヤーになりたいかという理想を掲げてやってきました。W杯で経験できていることもそうですし、この年齢になっても考えることは……自分がやってきたこと、抱いてきたもの、それを実行してきたことが素直に今に現れていると思います。必要なときに必要なことが起きた。ポジティブなものもネガティブなものもすべて、今の自分に必要で、起こり得ることだと感じている。

 そういう意味では、これからの人生だったり、この大会で起こっていることも含めて、自分に課せられているものは、必然的に起きていることだと思います。今感じているのはそういうことですね。だから、過去の理想と対比することはないですね」

 淡々と、そして丁寧に自身の想いを言葉にする柴崎の姿からは頼もしさが漂ってくる。そこには今大会で手にした大きな手ごたえと自信が感じられた。そして、決勝トーナメントでは新たなる体験が待っている。

【次ページ】 中盤の支配権を手繰り寄せたい。

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