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「ベルギーを後退させる力を日本は持つ」
トルシエが語るGL総括と次戦の要点。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/07/01 12:30
グループリーグ突破まで、その戦術的な選択で成功し続けている西野朗監督。日本一の名将として、さらなる高みを目指す……。
スタメン6人交代は最高の解決策。
――選手を6人代えたのは適切な判断と言えたのでしょうか?
「スタート時点では適切といえた。日本は攻撃的なチームだ。守ることを知らないチームでもあり、西野監督の中にもヨーロッパのような守りの文化はない。彼にとって防御する唯一の方法は攻撃することでありプレスをかけることだった。だから6人の完全にフレッシュな選手を起用した。これまでプレーしていない選手たちだ。というのも前から積極的にプレスをかけて、それによりボールを力強く前に運びたかったからだ。
前半を見る限り日本は、すでに予選を突破したかのようなプレーをしていた。リスクを冒す必要もなければたくさん走る必要もない。これまでのように攻撃的にプレーする必要もないし自分を表現する必要もない。それはナイーブさの表れであるように私には思えた。
ただ、同時に日本には相手のサッカーを破壊しうる文化もない。
プレーし続けなければどうしようもなく、プレーをせずに試合をすることは日本にはできない。それ以外に日本のやり方はない。
だから日本の特徴や西野監督の哲学を考慮したときに、あのスタメンは最高の解決策であるといえる。日本は自分たちの武器とともに今日の試合に敗れた。それでも前半は何度かチャンスを作ったが、決めることはできなかった」
ブーイングを受け続けた監督と選手を称賛。
――しかし終盤に突破という目的のために、冷静沈着にひたすらボールを回し続けたのは、ある意味日本が成熟したことを示していませんか?
「その通りで、目的達成のために現実的な選択をした西野監督も、あれだけの大ブーイングに怯むことなく冷静にプレーしつづけた選手たちも称賛に値する。
フランス対デンマーク戦もそうであったように、あれもまたサッカーの一部だ。
もちろん毎試合のようにやれるものではないが、目標達成のための戦略的オプションと割り切ることも大切だ。観客から非難を浴びるのは仕方がないが、日本は何ら恥じることはない」