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佐々木主浩、福永祐一の夢を叶えた
友道調教師の風通しの良い仕事術。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byKiichi Matsumoto
posted2018/06/15 07:00
調教師は誰もが一国一城の主である。それでも友道康夫調教師はワンマンな雰囲気とは無縁なのだ。
自分の手柄に、という気配がまったくない。
この物語にはまだ続きがあった。
その年、今度はヴィブロスの兄であるシュヴァルグランがジャパンCを優勝。1年遅れで佐々木の夢をかなえてみせたのだ。
「ヴィブロスのドバイもシュヴァルグランのジャパンCも、全て友道先生の判断に従っただけです」
大魔神はそう言って目じりを下げたが、とうの友道にマイクを向けると正反対の答えが返ってきた。
「佐々木オーナーが決めたこと。僕はオーナーが狙ったレースへ向けて全力でサポートしていったまで、です」
このような言葉は今回のダービーにおいても聞くことができた。
「しっかりと仕上げた」とは言ったものの、後は「スタッフがよくやってくれた」「祐一がうまく乗ってくれた」などなど。大仕事をやり遂げた人物はえてしてその偉業を自分の手柄にしたがるものだが、友道からそのような言動や態度は見られない。
しかし、そういう人柄だからこそ、駿馬を世に送り出し続けられるのだろう。“驕る平家は久しからず”は、単なる故事でも昔話でもない。現在の競馬界にも、世の中にも生きている言葉なのである。
ダービーは2勝目だが、これとてまだ道半ば?
インタビューで、福永は次のようにも答えていた。
「ワグネリアンは父がディープインパクトで母の父がキングカメハメハ。金子真人オーナーで調教師は友道先生なので、ダービーを勝っていないのは僕だけでした」
この言葉からも分かるように、友道は以前もこの3歳馬の頂点決定戦を制していた。2年前のマカヒキだ。
以来、2度目の制覇となったわけだが、もしかしたらこれとてまだ道の途中なのかもしれない。2頭のダービー馬を同時に管理するだけでも驚異的なことだが、そんな友道調教師の、友道厩舎の今後のさらなる活躍に期待しよう。