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エッフェル塔の下にクレーコートが出現。
「未来のエース」が繰り広げた熱い戦い。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

PROFILE

photograph byALEXIS REAU/ SIPA/ LONGINES

posted2018/06/15 11:00

エッフェル塔の下にクレーコートが出現。「未来のエース」が繰り広げた熱い戦い。<Number Web> photograph by ALEXIS REAU/ SIPA/ LONGINES

赤土の帝王ナダルの試合も観戦。

 表彰式のあと、参加者たちは付き添いのコーチや親も含めて全員でローランギャロスへ車で移動。クラブカフェで本格フレンチのランチをとり、センターコートで観戦した。ローランギャロスは今、リニューアルの真っ只中だ。敷地の拡張が進み、センターコートには開閉式の屋根もできる。テニスの試合自体もテクノロジー化が進み、時代に合わせて新しいルールやシステムが導入されたりもしている。フューチャーエース世代の誰かがテニス界の中心に躍り出る頃には、どう様変わりしているのだろうか。

 その“フューチャーエース御一行”が昼食を食べ終えた頃、ちょうどセンターコートでは大会の大本命ラファエル・ナダルと地元フランスのリシャール・ガスケの3回戦が始まっていた。

 試合が進み、2セットアップしたナダルが第3セットを4-1としたあとのチェンジエンドで、スタンドに〈ウェーブ〉を起こそうとしたグループがいた。小さな波は失速して途中で途絶える。そのグループはもう一度トライした。また失敗。あきらめずに、もう一度。そのうち、「しっかりつなげ」という意味のブーイングがあちらこちらから起こり始めた。やっと膨らみを見せた〈ウェーブ〉はついに一つながりになって1周。スタンドに歓声と拍手が起こる。それに勢いを得て、2周、3周と波が移動していく。ついに、巨大なウェーブとともにスタンドは一体となった。

 実は“発起人”はフューチャーエースの子供たちだった。つい数時間前に決勝で敗れてコーチの肩で泣きじゃくっていたデミンが、本来のムードメーカーぶりを発揮して音頭をとって始めたのだ。

 国境を超えてすっかり仲良くなった子供たちの茶目っ気と勇気が、粘り強さの先に1万4000人の観客を動かした。彼らは愉快そうに手を叩いてはしゃいでいたが、この大仕事で締めくくったパリでのあらゆる経験は、未来へ夢を広げる一助になったに違いない。

 テニスを動かし、世界すら変える力が〈未来のエース〉一人一人に備わっている。

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