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エッフェル塔の下にクレーコートが出現。
「未来のエース」が繰り広げた熱い戦い。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byALEXIS REAU/ SIPA/ LONGINES
posted2018/06/15 11:00
アガシとグラフ夫妻が驚く若年層の技術。
大会が始まる前日に行なわれたトレーニング・セッションで指導にあたったフレンチ・オープン2度のファイナリストであるアレックス・コレチャは、翌日に嘆息しながらこう印象を語った。
「12歳でこれだけハードヒットしているのは驚いた。180cmくらいある子もいるし。これから7年、8年経ったらテニスはどう変化しているのかと思うと、恐ろしい気もするよ」
現代っ子らしい才能に関しては、ともに元世界1位のアガシとグラフ夫妻も感心している。
「この年代の子を数年見てきて、毎年レベルが上がっているのを感じる。体格もよくなっているし、賢くテニスを学び、クレーの技術も習得している」と1999年のフレンチ・オープン初優勝によって生涯グランドスラムを達成したアガシ。
史上ただひとりの年間ゴールデンスラム達成者でありフレンチ・オープンでは6度の優勝を誇るグラフは、「私たちの時代に比べると、今の若い子たちははるかにプロフェッショナルだと思う。何を食べたらいいか、何を飲めばいいか、試合に向けてどう準備をするか、どんなトレーニングをし、どういうふうに体のセルフケアをするか――全てにおいて知識が豊富」と話す。
これらは、情報化の時代、スポーツ科学の浸透による賜だろう。
ハイレベルに進化する戦いは、まず5名ずつ4組に分かれたラウンドロビンを行ない、各グループの上位2人が決勝トーナメントに進出するというフォーマットで行なわれた。男女の準決勝以降は全てエッフェル塔の真下で実施。塔の真下というのは、つまり4つの脚の内側だ。見上げると、鉄のダイナミックな骨組みが圧倒的な迫力で視界を覆う。無数の隙き間から覗く青い空はことのほか鮮やかに見え、差し込む陽光が眩しい。
アガシは、この特設コートについて「ユニークですばらしいアイデア」と評した上で、「ただ、サーブが打ちにくくてしょうがない。トスを上げた瞬間、いろんなものがゴチャゴチャと目に入ってくるから」と言って笑った。奇抜なアイデアにはいつもちょっとした不快感と戸惑い、反発が付き物だ。しかし、それを克服できるのは未熟ゆえの柔軟さを持つ者の特権である。子供たちは、誰も不平を言わなかった。