バレーボールPRESSBACK NUMBER
ビーチバレーのイメージカラーは黒?
斬新な方針転換で認知度アップを。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byJVA BEACHVOLLEYBALL
posted2018/05/29 10:30
メインコートのネットとラインを黒にするなど、一目で会場を認識し、快適に観戦できるスペース作りを行っている。
メディア戦略も大きく変えることに。
メディア戦略担当の吉田は言う。
「私自身、専門媒体として競技者やファンの皆さんに向けて情報発信に努めてきましたが、ずっと外から感じていたことは、オフィシャルという組織の中で広報の土台がないことでした。最初にやらなければいけないと感じたのは、その情報を得る場所を明確にして、かつ事前の告知を増やすことでした」
ビーチバレーボールのプレスリリースの配信、公式サイトでの情報発信も、日本バレーボール協会の役割だったが、掲載する記事については速報性に欠けるという課題があった。特にプレスリリースについては送付に手が回らず、大会開催の数日前に送られてくることもあった。
「それでは、わたしのような専門誌は対応できても、事前に担当を割り振って取材をしている大手新聞社やテレビ局の記者は来てくれるわけがありません。事後報告ではなく、もっと事前に大会の情報を公開して、とにかくメディアに取材に来てもらいたい。そのためにビーチバレーボールの特設Webサイトを立ち上げ、SNSも大いに活用しようということになりました」(吉田)
特設Webサイトと会場の装飾のブランディングを重視することで、その情報をもとに会場を訪れた人が、一目で会場を認識し、快適に観戦できるスペースを作ろうという取り組みだ。まずは今シーズンのジャパンツアー第1戦、沖縄大会から会場のテント、メインコートのネットとライン、会場の仕切りの幕、スタッフのユニホームを黒で統一。ホームページやSNSのイメージとつながりのあるデザインに一新したのである。
ありふれている色よりも、黒を選択。
江口はこう説明する。
「なんで黒なんだ、暑苦しいという反対の声はありました。ビーチと聞いて真っ先に連想されるのは、ブルーやオレンジといった色でしょう。でも、だからこそ、そういう色はビーチにあふれている。あふれているので映えないのです」
昨年まで、ビーチバレージャパンツアーの試合会場は、行く先々の地方自治体で借りた既存のテントを利用していた。借り物なので、色や形が揃わず、統一感がない。ときには観客の視線を遮る場所に、運営用のテントが張られてしまうケースもあった。「ファンに見せる」という概念が圧倒的に欠けていたのである。当然といえば当然だ。
注目される機会が少ないため、問題提起をする人もいなかった。そのような反省点を洗い出し「競技会や運動会のレベルを脱して、プロの大会にしよう」を合言葉に、プロジェクトは動き出した。