イチ流に触れてBACK NUMBER
雪で試合中止。そこで発揮された
イチローの絶妙なリスク回避力。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2018/04/15 11:30
4月7日、厳しい寒さの中行われた試合、イチローは守備中、何度も息で手を温めていた。
中止後の移動前にもイチローらしさが。
翌日。ついにミネアポリスには雪が降り出した。
試合中止はプレーボール3時間前の午前10時に発表され、チームは次の遠征地カンザスシティーに向かうことになったのだが、この際にとったイチローの行動が、冒頭に記した「実に彼らしい」ものだったのだ。
中止発表と同時に球団のトラベル・コーディネーターからは移動スケジュールが届いた。
1:球場→宿舎 BUS 10:30出発
2:宿舎→球場 BUS 12:30出発
3:球場→空港 BUS 14:00出発
補足をしよう。まず、チームとして絶対の決め事は3だけである。球場から全員で14時出発のバスで空港へ移動しチャーター便でカンザスシティーへ向かう。その一方で1と2は球団が選手のために便宜を図ったものである。
1は朝早くから球場で準備したスタッフや早出練習をした選手が宿舎に戻りチェックアウト作業をするために用意された。2は集合場所である球場に向かうためのもの。全員ではないものの、大半の選手は球団の手配通りに“指示ではない指示”に従う。
14時までの時間の使い方を考えた。
だが、イチローの取った行動は違った。
A:宿舎→球場 チャーター車 10:30着
B:球場→宿舎 チャーター車 11:00着
C:宿舎→球場 チャーター車 13:50着
イチローが最初に考えたのは3の14:00球場出発の「チームとしての絶対事項」だ。彼はそこから逆算し、14:00までの時間の使い方を考えた。
一番気になったのは2である。宿舎から球場までは10分もかからない。移動の身支度を整え12:30出発のバスで球場へ向かい、14:00まで何をすればいいと言うのか。約80分ほどではあるが、彼にとっては“無駄な時間”が多すぎるのである。