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駒大苫小牧の応援が甲子園で復活。
高校野球におけるブラバンの「力」。
posted2018/04/16 08:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
今年の選抜大会は、改めて応援の力を感じた大会だった。
応援団賞の最優秀賞に選ばれたのは、彦根東だった。応援団の赤いウインドブレーカーで真っ赤に染めたアルプススタンドは、まさに圧巻の一言。四隅までひとつの色で統一されたスタンドは、他に見た記憶がない。
慶応戦で、逆転3ランを打った高内希は「応援席を見て力をもらった」と語ったものだ。
ただ、もっとも応援の追い風を受けたのは、準優勝の智辯和歌山だろう。同校の応援は「C」の人文字と、ド迫力な「ジョックロック」の演奏で知られる。
準々決勝の創成館戦は最大5点差を逆転、準決勝の東海大相模戦は最大5点差を逆転した。東海大相模戦にいたっては6回裏、キャプテンを含む主力3選手による3つのエラーが重なり大量4失点しただけに、雰囲気は最悪だった。中谷仁コーチが振り返る。
「野球を知ってる人なら、完全にあきらめるでしょう。流れ的に完全に負けなのがわかりますから。でも、応援席はあきらめてなかった。準々決勝の流れもあって、智辯の打線なら5点差くらい返すんじゃないかと。そんで、うちの選手らは子どもやから、調子に乗ってしまうんですよ(笑)」
田中将大「駒大苫小牧の強さの秘密はブラバン」
過去、応援の力をもっとも感じたのは、'04年夏から'06年夏まで3年連続で決勝に進み、優勝、優勝、準優勝という大記録を残した駒大苫小牧である。'05年、'06年とエースとして活躍した田中将大(ヤンキース)も「うちの強さの秘密はブラバンですよ」と話していたほどだ。
当時、指揮を執っていた香田誉士史(現・西部ガス監督)はしみじみ語っていた。
「1点返しただけでも球場が盛り上がるから、4点差くらいあっても、何とかなるような気になってくるんだよね」
高校野球ファンの中には、各校のブラスバンドの演奏を目当てに駆け付けるファンも少なくない。駒大苫小牧の応援は、そんなファンの中で今も語り草になっている。
その理由を同校の吹奏楽部の顧問、内本健吾さんはこう語る。
「他校の応援は、管楽器に打楽器が乗っていく感じ。でも、うちは打楽器からつくっていって、その上に管楽器が乗っていくイメージ。だから音が直線的で力強い。ロックのイメージに近いと思います」