ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
根室でしか見られないプロレスラー。
アンドレザ・ジャイアントパンダ!
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2018/03/13 10:30
写真ではわかりづらいが、3mは極めてデカい。その異様さをぜひ動画で確認してほしい。
着ぐるみぐらい、プロレスは余裕で受け入れる。
以後、根室市周辺のお祭りイベントなどを中心に、年数回プロレスを開催。寒冷地のため10月から3月までは、練習場として利用している倉庫が寒すぎて練習もできないという理由で休業する。
そんなゆるやかなペースで活動を続けてきたが、数年前から見に来た子供たちを喜ばせるために、着ぐるみのレスラーを登場させるようになり、その延長線上で昨年、アンドレザ・ジャイアントパンダが誕生。新根室プロレスは、11年目にしてブレイクをはたしたのである。
アンドレザ・ジャイアントパンダの姿だけを見ると「単なる着ぐるみじゃないか。これをプロレスラーと呼べるのか?」と思う人もいるかもしれない。いや、当然いるだろう。
ただ、プロレスは他に類を見ないほど寛容性の高いジャンル。これまでも、着ぐるみレスラーは数多く登場している。
たとえば、大仁田厚率いるFMWでは、'90年代初頭からすでに「パンディータ」なるパンダの着ぐるみレスラーが活躍していたし、2000年代半ばには、DDTプロレスリングの別ブランド団体で、機械化されたミイラ男という触れ込みの「メカマミー」がプチブレイクをはたしている。
猪木が画策した「3mの巨神兵」。
さらに、じつはプロレス界の象徴でもあるアントニオ猪木も、かつてアンドレザ・ジャイアントパンダ的なレスラーを登場させようとしていたのだ。
1987年12月、ビートたけし率いる「たけしプロレス軍団(TPG)」の刺客として登場したビッグバン・ベイダーは、上半身を巨大な甲冑で覆い入場してきたが、新日本プロレスのプロデューサーでもあった猪木は当初、上半身だけでなく全身を甲冑で覆った、身長3mの“巨神兵”のようなレスラーを登場させることを考えていたという。
結局、猪木のそのプランは社内会議において、予算オーバーと「3mの巨神兵をレスラーにするのは荒唐無稽すぎる」という、もっともな意見によりお蔵入りとなり、上半身だけ甲冑姿のベイダーが誕生したと言われている。
つまり、身長3mのアンドレザ・ジャイアントパンダは、ある意味で、かつて猪木が夢見た“正調”ベイダーを実現させたものでもあったのだ。たぶん。