酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
日本のサブマリン投手は美しい。
山田久志から牧田和久に流れる伝統。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAFLO
posted2018/02/26 10:30
WBCなど国際試合でも活用された牧田のサブマリン。シーズンを通じてもメジャーで活躍できるか注目だ。
日本のサブマリンは美しい。
最近では、渡辺俊介もぐぐっと沈み込むきれいなフォームだった。日本球界では87勝だが、ボールを持った右腕を高く掲げ、力感のないゆったりとしたフォームから、意外に威力のあるボールを投げ込んだ。
牧田和久も渡辺俊介に似ているが、投球動作とともに右腕を折り曲げるのが渡辺とは違う。牧田の方がもう少しダイナミックだ。
とにかく、日本のサブマリンはフォームが美しい。それがアメリカのサブマリンとの最大の違いかもしれない。
アメリカのサブマリンと言えば、引退した投手ではダン・クイゼンベリーやチャド・ブラッドフォードが有名だが、いずれも腰高だ。球は浮かび上がるというより、回転しながら落ちてくる。
ブラッドフォードは「マネーボール」のアスレチックス、ビリー・ビーンGMに見いだされた投手で、日本のサブマリンに似ているが、体を沈みこませるのではなく、腕だけをマウンドすれすれまで下げているように見えた。
パドレスの本拠地はピッチャー有利。
現役では、ブラッド・ジーグラーが有名だ。私はこの投手のフォームが大好きだが、日本のサブマリンとは全く違う。
たとえが悪いかもしれないが、火曜日に燃えないゴミを出せと奥さんに言いつけられた旦那さんが、邪魔くさくなってゴミ置き場の手前で「でやー!」とゴミ袋をほうり投げたような感じなのだ。足をかくっと上げることもあって流れるようなフォームとはいいがたい。やはり日本のサブマリンとは別物だ。
しかしいくらフォームが美しくても、打たれては仕方がない。牧田はどうだろうか?
サブマリンは球速が出ないと言われる。大洋のエース秋山登は、アンダースローで剛速球を投げたと言われるが、牧田の場合、速球は130km台だ。三振をバッタバッタ奪うような投球は期待できない。
牧田は、ボールの出所がわかりにくい上に、タイミングを微妙にずらしたり、同じ球筋から微妙に変化するツーシームなどで勝負することになるのだろう。先発でも救援でも十分な経験があるが、救援投手としてスタートするのではないか。
サンディエゴ・パドレスの本拠地、ペトコ・パークはWBCの米国ラウンドの舞台として日本にもおなじみだが、本塁打が出にくいピッチャーズパークだ。牧田は思い切って打者を攻められるはずだ。